ニッポンの電子化は無駄ばかり、真の「IT化」を――イーコーポレーションドットジェーピー廉社長(1/3 ページ)

電子化ではなく情報化を。ただ単に今まで行われていた業務を電子計算機を利用し自動化しても多少コストは下がるが、真の意味での利便性と業務効率化、本格的なコスト削減にはつながらない。国民がメリットを享受できる公共サービスは何か。現状の全面否定からスタートする、その発想が必要だ。

» 2012年08月22日 08時00分 公開
[聞き手:浅井英二、文:山田久美,ITmedia]

 国連の電子政府ランキングでここ数年、1位をキープし続けているIT先進国、韓国。一方、18位と低迷する日本。日韓両国の違いをよく知る立場から、現在、日本でITコンサルティング事業を展開しているイーコーポレーションドットジェーピーの廉宗淳社長に、日本が抱えるIT化の問題点について話を聞いた。

イーコーポレーションドットジェーピー 廉社長

 「“電子化”と“情報化”は似て非なるもの。ところが、日本では、行政も医療分野も教育分野も、今までのように対面サービス、紙ベースの業務プロセスを前提にデジタル化、つまり電子化しているだけ。だから、国民が喜ぶような公共サービスが提供できていないどころか、莫大な税金の無駄遣いが起こっている」(廉氏)

 廉氏は、公共サービスのIT化に関する日韓両国の違いをよく知る立場から、現在、日本で、国や地方自治体を対象に、行政、医療、教育の3分野で、ITコンサルティング事業を展開している。

 「もし、わたしが主催する“インターネット・コロンブスツアー”の参加者の10%でも真のIT化に取り組んでいたら、今回の消費税の増税は避けられたのではないか。わたしは本気でそう思っている」(廉氏)

 インターネット・コロンブスツアーとは、日本人を対象に、廉氏が2000年から実施している、韓国の電子政府や医療現場、教育現場などさまざまな分野におけるIT化の状況を視察するツアーのことだ。参加人数は延十数年間で4000人を超えている。参加者はITベンダーの行政関係者、国家公務員や地方公務員、政治家が多くを占めるという。

 「韓国の公共サービスにおけるIT化の現状を知ると、皆さん、大変驚き、日本でもぜひ実現したいと異口同音に言われる。しかし、帰国後、実際に行動に移されるのは1%程度に過ぎない。さまざまな障壁があって日本では困難だからだという。非常に残念だ」(廉氏)

 韓国は、1997年に起こったアジア通貨危機により、経済的に大きな打撃を受け、IMF(国際通貨基金)からの援助を要請する事態に陥った。その後、1998年に大統領に就任した金大中(キム・デジュン)氏が経済改革の一環として、IT産業の奨励を推進した。その結果、1990年代後半から、各分野でIT化が進み、一気にIT先進国となった。中でも行政に関しては、国連の電子政府ランキングでここ数年、1位をキープし続けている。一方、日本は、2012年度は18位と低迷しており、好転の兆しは見えていない。

 「日本は、公共サービスのIT化に関して、欧米をお手本にしようとするが、そもそも国の制度やしくみが違うため、あまり参考にならない。その点、現在の韓国の制度は、日本の統治時代の制度が基になっており、印鑑登録、戸籍制度、住民票の制度、保健医療制度は、すべて日本が韓国にもたらしたものだ。このように、日本と韓国の公共サービスは非常に似ているので、韓国は日本の先行事例になり得る、とわたしは確信している」(廉氏)

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