マニュアル制作は組織の現状把握から始まるマニュアルから企業理念が見える(1/2 ページ)

経営理念から作業手順書にいたる縦の構成、と販売マニュアルから総務、製造、購買といった各業務ごとの専門マニュアルが横に並列している。この縦と横の関係をしっかり見定めていかなければならない。

» 2012年09月10日 08時00分 公開
[勝畑 良(ディー・オー・エム・フロンティア),ITmedia]

 企業のグロ−バル化に役立つマニュアルの制作をどういう手順で進めたらよいかという問題を解くのは容易ではなない。マニュアルは、画一的なものではないからである。100の企業には百通りの進め方がある。

 マニュアルは企業内において、経営理念から作業手順書にいたる縦の構成と販売マニュアルから総務、製造、購買、といった各業務ごとの専門マニュアルが横に並列している。つまり碁盤の目のように構成されている。この縦と横の関係をしっかり見定めていかなければ、新入社員マニュアル一つでさえ、実務に役立つマニュアル構築はできない。

 マニュアル作りの基礎は、それがどんなマニュアルであっても、原則的には前回説明したことと同じである。経営計画が職務の作業手順に影響し、作業手順書の社員把握が経営計画の達成を左右する結果を生み出していく。

 職務をべ−スとして作りやすく、誰にでも理解可能な職務を選び、できるものから作って利用すればよい。新入社員マニュアルなどは、全員の合意を得やすいマニュアルである。どこの部や課でも最低限の知識と必要な行動は共通している。しかし、それぞれの担当業務において必要な知識と行動には独特のものがある。だからこそ、こうした比較的に共通部分が多いマニュアルを制作していくことが大切となるのである。必要な行動や作業手順の共通部分を他部門がすでに制作していて、抜書きすることが容易なマニュアルから作成を積み重ねていくことをお勧めする。

 しかし、企業のグロ−バル化に即応しいくマニュアル体制を確立するためには、どうしても、一定の定型的マニュアル制作手順が必要となる。つまり、マニュアル全体の俯瞰的視座ともいうべきものである。

 この視座をもっている企業は少ない。マニュアルの企業における実態は個々ばらばらである。各企業の文化や体質が色濃く反映しているものだけに、そうなるにはそれなりの理由もある。そこで、最も典型的な経営理手順マニュアルから初めて、最終的に作業手順マニュアルに至る例を説明する。しかし、実際面でマニュアルをどういう手順で制作するかは、それぞれの企業の考え方次第である。

 最も典型的な制作手順は、経営理念マニュアルから各部門毎の業務マニュアル、そして順次業務マニュアルから職務マニュアルへと、つまり経営組織の上位ポジションから下位ポジションへと、組織概念にしたがって制作していくものである。この場合総論からか各論へと経営者の意思を表面に押し出して制作するという現実的制作手順である。この手法は日本の経営組織では順応性が高い。上意下達に慣れているわが国の企業においては、関係部署の協力も得やすい。

 このやり方の最も良い点は、経営者の考え方が先行して表現されていくので、作成されたマニュアルの浸透の方法さえしっかりと行えば比較的に混乱が少なくて済むという点である。しかし、現場をあまりよく知らない経営者の理想論や経営計画だけが先行し、頭でっかちのマニュアルづくりに終わってしまうこともしばしば見られる現象である。

 ある中小企業の場合、経営計画マニュアルが文字どおり上位マニュアルの働きを示した。社員が同意し、納得した経営計画がマニュアルの形で明示された。社員はこの計画を達成するように努力を重ねていけばよい。経営計画を実現しようとする社員の活動は、必ず業務マニュアルという形で継続的に実行されていく。

 一見経営計画の数字とは何の関係もないようにみえる業務を構成している沢山の職務の手順が社員のものとなって安定化されていく。こうして経営計画は、沢山の社員の日常的行動の蓄積された結果として結実するのである。経営者の経営基本方針を良く聞き取り、分かりやすい表現で箇条書きに表すことができればそれでよい。

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