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» 2012年09月11日 08時00分 UPDATE

Gartner Column:フロントオフィス・イノベーション――CIOは社内企業家「イントラプレナー」となれ (1/2)

多くの企業で、差異化を増進することが市場戦略の柱となっている。競合他社との違いは何か? それを訴求するポイントである差異化のために何ができるのか。

[小西一有(ガートナー ジャパン),ITmedia]

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 今回は、10月3日から5日まで、東京・港区お台場で開催される「Gartner Symposium/ITxpo 2012」で、わたしが講演する「フロントオフィス・イノベーション -The Game Change-」の内容のさわりを紹介しましょう。なぜならば、ガートナーでは、今後、CIO/ITエグゼクティブの皆さんが、必ずこのテーマにチャレンジしなければならないと考えているからです。

フロントオフィスは、今までとは違う取組みが必要である

 表題にある「フロントオフィス」とは、日本では、あまり聞き慣れない言葉かもしれません。ガートナーでは、フロントオフィスを「企業の売り上げまたは価値が生まれる領域である」と定義しています。企業組織においては、セールス、マーケティング、商品開発、ソリューション・デリバリの各部門がフロントオフィスに含まれます。

 フロントオフィスは、企業が自らを差別化する場所と言えます。多くの企業は、自社のフロントオフィスが、市場にいかにアプローチするかによって自社を差別化できるかどうかが決まると考えています。そのため、フロントオフィスには、間接部門であるバックオフィスよりも個人、組織レベルで大幅な特異性(ユニークネス)を許しています。

 非常に高い実績を挙げるフロントオフィス組織は、イノベーションを醸成し、市場における自社のアジリティ(俊敏性)を高めるために、組織中の「個人」「チーム」「事業部」などに大幅な自由と自律を認め、グループ同士を競わせることが多いと考えられています。そのため、フロントオフィスには、IT が従来フォーカスしてきたバックオフィスよりも極めて大きな自由度があります。

 実は、この事実が、CIO及び、IT部門には理解できずにバックオフィスの時の成功体験を、フロントオフィスでも展開しようとしてしまうのです。バックオフィスで最も成功を収めているCIO/ITエグゼクティブは、ビジネス・プロセスとITソリューションを最適化、標準化し、コモディティ化するという工程を踏んでいます。

 フロントオフィスでこのアプローチを取ると、運が良ければフロントオフィスのニーズに反するというだけで済みますが、最悪の場合には、自社の差別化を減少させ、企業価値を壊してしまう恐れがあります。そのため、フロントオフィスでは、バックオフィスとは全く別のアプローチから、テクノロジによってビジネスを成長させる必要があります。CIO/ITエグゼクティブが、フロントオフィスで成功を収めるためには、思考の抜本的転換が必要ということです。

差異化がCIO のミッションを定義する

 多くの企業では、差異化を増進することが市場戦略の柱となっているはずです。顧客には、他社ではなく、当社を選択してもらう必要があるからです。競合他社との違いは何か? それを訴求するポイントが差異化だからです。CIOはこれまで、自社の差異化を達成するためにテクノロジのレバレッジ(少ない力で大きな成果を得ること)を生み出すか、あるいはレバレッジを高めてきました。

 企業の発展においてテクノロジを産業化したり、サプライチェーンをデジタル化するという段階では、このようなテクノロジのレバレッジによって価格や物流効率の面で差別化を生み出すことができました。しかし、企業間の価格や作業効率がますます拮抗(きっこう)しつつある今日、IT が価格や作業効率の面で差別化を生み出せる機会は瞬時に消えるといえるでしょう。

 つまり、これらの領域における投資収益も縮小傾向にあると言わざるを得ません。そこで、CIO には、企業の差異化を増進するための新たな手段を探すことが求められているのです。多くの業界では、消費者が主たる差異化要因としての価格あるいは製品機能に敏感に反応しなくなっており、これが市場の均質化につながっていると考えられています。市場の均質化は、これまで有効だった差異化アプローチに疑問を呈するものです。

 コペルニクス・マーケティング・コンサルティング・アンド・リサーチ(Copernicus Marketing Consulting and Research: copernicusmarketing.com)による口頭アンケート調査によると、競合する2つのブランドが類似していると見る消費者がますます増加していることが明らかとなりました。消費者がこのようにブランド間の類似性を感じているため、企業は競合他社と差別化するための持続可能な方法を模索するようになっています。

 多くの企業は、カスタマー・エクスペリエンス・マネジメントに注目しています。ここからCIO に対して発信されるメッセージは、少し複雑です。多くの場合、顧客経験価値に影響を与える「真実の瞬間(moments of truth)」には人と人とのやり取りが含まれますが、これまで、こうしたヒューマン・インタラクションを自動化するのは非常に難しいと考えられていました。

 しかし、こうした真実の瞬間は通常、十分にデジタル化されていないため、CIO にとっては非常に素晴らしい機会だと捉えるべきです。多くの企業は、カスタマー・エクスペリエンス・マネジメントに取り組む上で、担当者に高い自律性を与え、顧客との建設的なインタラクションを促しています。

 この場合、企業戦略は、IT部門ではなくフロントオフィス自体(例: セールス、マーケティング)に「真実の瞬間」のデジタル化を推進させています。このような状況下でCIO がフロントオフィスのパートナーになるには、自分がフロントオフィス・ソリューションの信頼あるプロバイダーであることを証明しなければならないでしょう。

 フロントオフィスのデジタル化は、バックオフィスのレバレッジを適用することとは全く異なります。バックオフィスでは、IT 部門がバックオフィスのプロセス・エキスパートにニーズを尋ね、そのニーズに「自動化」で応えれば十分でした。もし、プロセス・エキスパートがいない場合、賢明なCIOであれば自分のプロセス・マネジメント能力に投資し、それによってビジネスへのインパクトを拡大することができました。

 しかし、フロントオフィスのデジタル化は、どちらかと言えば、イノベーション・プロセスに似ています。つまり、プロセスを自動化するというよりも、テクノロジを使ってフロントオフィスのスタッフ/組織の有効性(戦略や計画に基づく目標を達成する能力を持つこと)を強化するということなのです。

 フロントオフィスのイノベーションに注力するフロントオフィスCIOが、営業マンの有効性を高め、これによって企業を差異化することにフォーカスしていれば、同じ「真実の瞬間」を持っていたとしても、全く別の物語を描けたはずです。これらの「真実の瞬間」をデジタル化することで、多くの場合、商談を成立させるチャンスが高まるからです。

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