連載
» 2012年12月10日 08時00分 UPDATE

マニュアルから企業理念が見える:形式的観点からみたマニュアルの5つの要素 (1/2)

マニュアルは「表紙」「目的」「使用用具」「作業手順」「注意事項」の5項目から成り立つ。いずれも大切だが、今回取り上げた作業手順と注意事項は重要性が高い。

[勝畑 良(ディー・オー・エム・フロンティア),ITmedia]

 前回示ししたマニュアルの5つの構成要素のうち、第1章の「表紙」はマニュアルの限定性を明示するものであり、続く第2章「目的」は、経営者や管理者のマニュアル作成意図を明確にするのが目指すところである。また、第3章の「使用用具」は、作成対象職務の作業条件や作業環境を明らかにするものである。

 いずれも大切な事項であるが、今回、取り上げた「作業手順」と「注意事項」は、マニュアルの5つの構成要素の中では、重要性の高いものである。特に、第4章の作業手順は、マニュアルの評価を決定づけるものであるといっても、過言ではないであろう。本格的なマニュアルとは、この作業手順と経営者、管理者の関心が明らかとなる第5章の注意事項の2つが充実しているマニュアルである。

(4)作業手順

 この項目を記述するにあたっては、この作業に従事する全ての担当者の知識、経験、感覚が網羅され、結集されなくてはならない。マニュアル作成者は、個々に、あるいは全員を集めて、仕事に係わる経験知を集めなくてはならない。

 経験知を具体化しているものは、行動である。行動を把握するためには、作業活動を自分自身で実践しなくてはならない。時と場合によっては行動を動作の段階まで砕いて観察しなくてはならない。

 そして、なぜこのような手順で作業が進められているのかを自問自答しなくてはならない。分からなければ、作業者に質問し、自分自身が納得しなくてはならない。こうして作業手順を確定させていき、記録する。作業のステップが手順として確認されるのである。

 作業手順は、改善はもとより全ての創造の原点である。着手から終了までの一貫した作業手順には必ず構造がある。作業の目的を達成するための主流とそれを加速あるいは援助するための補助作業が傍流となって、絡み合って作業は進められている。こうした一連の作業手順を記録し、全体を図示し、なぜこうなるのかを観察し、最終的にこれを当該作業の作業手順として決定し記録する。これがマニュアルの中核である。

 作業手順は、安定し、固定しているものもあれば、完全に個人の恣意に委ねられているものもある。この 2 つをよく比較してみることも大切である。理論と実際が一つとなり、大きな成果をあげることもしばしばある。

 例として、入社式というタイトルの手順書を書くとしよう。入社式を主催するものにとって、最初の仕事は出席者の確認である。社長から関係部長まで、企業によってさまざまである。この仕事を仕事の順序に従って整理すれば、準備、実施、終了の3つの職務群に分類できる。

 準備は全ての出席者の確定、連絡に関連する職務群と式次第に関連する職務群とから構成される。次の実施は、新入社員の点呼着席、司式の職務群となる。終了は退席と片付けの職務群となる。

 このように一つの職務マニュアルは、多数の職務から構成されるものであると同時にその職務はいくつもの行動手順、言い換えればそれを記述した行動手順書から作り上げられているのだということが明確に理解されるであろう。

 仕事を観察することによって仕事の手順が把握されることもあれば、職場の全員の討議で適正行動手順が発見され、確定されることもある。マニュアルが生きるのも、死ぬのもこの適正行動手順が職場で是認されているかに掛かっている。この合意がないマニュアルは、必ず死んでしまう。

 的確な行動の掘り起こしとその行動が職場の標準として認識される間に管理者の全ての能力が傾注されていなくてはならない。マニュアルを作るということは「その職場の中で、現実に行われている作業手順のうち、最も安全で安定している作業手順を記録し、標準として定める」ことである。従ってこの仕事は職場構成員の理解と協力、参加なしには成り立たない。

 このことは職場構成員が、事前に用意しなければならない事柄に関する行動、実際の職務行動、事後に行うべき行動を意識的に把握していることが前提となる。こうした職務把握があって、初めてマニュアルはその存在価値を明確化していくこととなる。

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