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» 2013年01月28日 08時00分 UPDATE

ITmedia エグゼクティブ勉強会リポート:ソーシャルメディアの活用で事前期待のマネジメントを実践 (1/2)

「勝負は、お客様が買う前に決める!」ソーシャルメディア×事前期待のマネジメント 成功企業が密かに取り組む事前期待のマネジメントとは。

[山下竜大,ITmedia]

 アイティメディアが開催している「ITmediaエグゼクティブ勉強会」に富士通の柴崎辰彦氏が登壇。著書である「勝負は、お客様が買う前に決める!」の内容に基づいて「ソーシャルメディア×事前期待のマネジメント 成功企業が密かに取り組む事前期待のマネジメント」と題した講演を行った。

 サービスサイエンスという学門の領域で、「事前期待のマネジメント」という分野が最近注目されている。この概念とソーシャルメディアを組み合わせると、「勝負は、お客様が買う前に決める!」ことも不可能ではない。「勝負は、お客さまが買う前に決まる!」のではなく、「勝負は、お客様が買う前に決める!」が目指すべき姿である。

サービスサイエンスとオオクワガタ

shibasaki290.jpg 柴崎氏

 発想としては、買う前に顧客をファンにしてしまい、ライバルとの勝負を付けてしまうというものだ。柴崎氏は、「わたし自身、サービスサイエンスの研究者であり、幻のクワガタと呼ばれたオオクワガタのブリーダーでもあります」と話す。オオクワガタのブリードとサービスサイエンスにどのような関係があるのか。

 「オオクワガタのブリードのための、ホームページ、オークション、ブログ、ソーシャルメディアなどをマルチチャネルのコンタクトセンターとして運営し、サービスサイエンスを実践している。オオクワガタの提供を通じ、お客様との対話などサービスの提供仕方について検証しています」(柴崎氏)

勝負は、お客様が買う前に決める!

 市場においてライバルと差別化する場合、購入前、購入時、購入後、どの購買プロセスを重視すべきなのか。一般的には購入後のアフターサービスが重視されているが、もし顧客が購買活動をする前に「共感」を獲得することができれば、ライバルに大きなアドバンテージを得られる。

shibasakizu.JPG 「事前期待」と「お客さま満足」

 例えばリクルートが運営する「SUUMO(スーモ)」は不動産取引サイトだが、一般的に不動産取引は、就職したときとか、結婚したときなど、人生においてそれほど多くはない。このいざというタイミングのときに、SUUMOというブランドを思い出してもらうために様々なプロモーション活動を展開している。

 SUUMOは将来の潜在顧客にアプローチすることで、顧客が不動産を購入する前にライバルに差をつけている。モノやサービスを購入してもらうためのカギは、顧客の満足度にあり、顧客の満足度は、顧客の事前期待値にどこまで応えることができたのかという達成度で決まると考えられている。

 それでは、事前期待にはどのような種類があるのか。事前期待には、共通的な事前期待、個別的な事前期待、状況で変化する事前期待、潜在的な事前期待の4つがある。

 「共通的な事前期待とは、お客様が共通的に持つ事前期待で、例えば外野手を目指す野球少年が買い求めるグローブは、指先の長いものが好まれるというもの」(柴崎氏)

 また個別的な事前期待は、顧客の個人的な好みに対する事前期待のこと。例えば、イチローモデルの外野手用グローブがほしいと思うようなこと。状況で変化する事前期待は、顧客現在の心境を察知して提供する事前期待で、例えばバット売り場でもイチローモデルのバットに興味を持つ顧客にセットで購入を勧めることだ。さらに潜在的な事前期待は、顧客も気付いていない潜在的な事前期待に応えることであり、例えばイチローモデルの外野手用グローブを買った時に予期せずイチローのポスターをもらって大喜びするようなことだ。

 「やはり事前期待と顧客満足の関係で、実績評価に比べて事前期待が大きすぎる場合には落胆に変わり顧客を失う。また実績評価と事前期待が同等の場合にはあまり印象に残らずライバルがいなければ取引を継続できる。さらに実績評価が事前期待よりも大きい場合には、大きく顧客満足度が向上し、リピート客になる」(柴崎氏)

 つまり顧客満足度は、事前期待と実績評価の相対関係で決まることになる。これはシンプルな考え方だが、意外と顧客との関係を考えるときに抜け落ちていた。次に、ライバルに圧倒的な差別化を図りたい場合、企業は何をすべきなのか。

 「お客様のことを深く理解したうえで、"基本は事前期待に応える"ことだ。そして事前期待がふくらみすぎている場合や冷め切っている場合には、"事前期待のマネジメント"が必要。これにより、多くのお客様を自社のファンや応援団にすることができる」(柴崎氏)

 また、サービスサイエンスで議論されている概念にサービス品質がある。サービス品質では、正確性、迅速性、柔軟性、共感性、安心感、好印象のうち、何を重視すべきなのか。「一般的な企業では、正確性や迅速性が重視されている。しかしお客様1人ひとりを大切にするためには、共感性や安心感、好印象を重視すべきである」(柴崎氏)

 それでは、ライバルと自分たちのサービスをどのように比べればよいだろうか。1つのアプローチとして、サービスをプロセスに分解し、各プロセスを、正確性、迅速性、柔軟性、共感性、安心感、好印象の6つのサービス品質で評価することが必要になる。

まずは、お客様から注目される存在になる。

 ソーシャルメディア革命の時代といわれている現在、ソーシャルメディアは購入前の顧客との親密なコミュニケーションを実現する手段となる。ソーシャルメディアの活用には、(1)顧客からのクレームの危険があるので活用はしばらく控えさせる、(2)顧客との対話の場が開けたと判断し、活用を促進する、(3)同業他社のようすを見るなど、さまざまな対応が考えられるが、日本企業の多くは(3)の同業他社のようすを見る現実的ではないだろうか。

 ソーシャルメディアとマスメディアの違いは、マスメディアが一方通行のコミュニケーションであるのに対し、ソーシャルメディアでは両者が対等な双方向のコミュニケーションになることだ。

「双方向のコミュニケーションというメリットを生かさなければならない。しかしソーシャルメディア上でマスプロモーションを仕掛けてもお客様は振り返ってくれない。情報洪水の中でメッセージは埋もれてしまう。そこでソーシャルメディア上の信頼できる知人や友人のアドバイス(推薦)が有効になる」(柴崎氏)

 話題性の高いコンテンツの条件は、広く受け入れられる内容、役に立つ内容、魅力的、クセになる内容、ニュース性のうちどれなのか。一概にどれが正解ということはいえないが、共感を築くには話題性のあるコンテンツを提供することが重要になる。例えば、花や食べ物、動物は共感を呼びやすい。また写真や英語のコンテンツも重要になる。

 「日本の製造業やサービス業では、モノ作りにこだわりを持っている人が多い。その中で最近、超目されているマーケティング手法に"インバウンドマーケティング"がある。アウトバウンドマーケティングに対する言葉であり、アウトバウンドマーケティングが大声でお客様を呼び込む手法なのに対し、インバウンドマーケティングは、よい商品を提供すれば、必然的にお客さまがわざわざ来てくれるという手法になる」(柴崎氏)

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