標準化によって少子高齢化や災害医療の課題に立ち向かう「コンティニュア」の取り組みITmedia エグゼクティブセミナーリポート(1/2 ページ)

2月27日に開催された「第23回ITmediaエグゼクティブフォーラム」では、「ビジネスを変革するM2M」をテーマに、各国での標準化の取り組みや、実際の事例が多く披露された。特別講演に登壇した、インテル イノベーション事業本部デジタルヘルス事業部事業部長の田上信介氏は、M2Mのヘルスケア分野における普及と標準化に取り組んでいる業界団体「コンティニュア・ヘルス・アライアンス」の活動について紹介を行った。

» 2013年04月17日 08時00分 公開
[柴田克己,ITmedia]

 コンティニュア・ヘルス・アライアンス(コンティニュア)は、健康・医療分野のシステムやサービスのスムーズな相互運用を実現し、そこからより高品質な「予防的な健康管理」「慢性疾患の管理」「自立的な生活支援」を提供することを目的に設立された団体である。

インテル イノベーション事業本部デジタルヘルス事業部事業部長の田上信介氏

 健康・医療機器メーカーやテクノロジーベンダー、サービス提供者などによって組織されており、参加ベンダー数は全世界で200社以上にのぼる。インテルをはじめ、GE,、IBM、オラクル、シスコシステムズ、グーグル、日本のメーカーとしては、パナソニック、シャープ、富士通、ソニーなども名を連ねており、日本国内での活動を行っているメンバー企業は40社を超えるという。

 田上氏は、「コンティニュアについて、2006年の設立当初から、さまざまな形でプレゼンテーションを行ってきたが、徐々に認知度も上がってきていることを実感している。近年では、ヘルスケア周辺でのビジネス展開を目指す企業も増えており、その中でコンティニュアに関心を持つ企業も多い」と述べた。社会的な少子高齢化の進行に加え、東日本大震災のような大災害後に、救急医療の次の段階として、地域住民の健康管理をより効果的に行える仕組み作りへの要請が高まっているのではないかという。

コンティニュアが目指す「つながるヘルスケアシステム」

 田上氏は、日本だけでなく世界的な動向である「少子高齢化」の流れの中で、ヘルスケアの世界では、医療費の高騰や医療従事者の不足といった課題が生まれていることに触れ、「ニーズは高まっているのに、それに充てられるリソースの増加は見込めない。この問題を解決するためには、医療分野に新たなソリューションモデルが必要であり、大幅な効率化を進めていくしかない」とした。この問題において、日本は「トップランナー」であり、世界に先駆けて、課題解決に取り組んでいく必要がある点を強調した。

 人々の「生活の質(QoL)」を高めつつ、全体で必要となる健康維持に必要なコストを下げていくためには、継続的な治療が必要になる慢性疾患の患者や、入院による手術や治療が必要になる患者の絶対数を極力減らし、「健康」な状態での積極的、予防的な健康管理を行っていくことが重要になる。その効果を最大化するためには、各種のケアサービスの連携、医療・健康データの効率的な共有が必要となってくる。

 総合病院、ホームドクターに加え、検診システム、介護センター、そして家庭や地域コミュニティを接続し、個人の健康に関するデータを必要に応じて共有できる「つながるヘルスケアシステム」の実現が理想的な姿だが、システムを容易につなげるためには、各医療機器や健康器具で生みだされ、システム上で処理されるデータフォーマットの標準化が必須だ。コンティニュアの活動は、このデータの標準化を進めていく部分が中心となる。

つながるヘルスケアシステム

 「プロプライエタリなものではなく、標準化されたデータが蓄積されていくことに意味がある。データが標準化されることにより、統計学的分析を施し、次世代の医療技術の向上に向けた研究や、ケアコスト最適化の検討といった形でのデータの有効活用が促進される。これは、いわゆる"ビッグデータ"の一部となる」(田上氏)

 6年以上にわたる活動の中で、既にコンティニュアを採用した実証実験や、実際の製品やプロジェクトも多数生まれている。そのひとつとして紹介されたのは、2012年9月〜3月に茨城県つくば市で実施された「ICT健康サポートプロジェクト」だ。このプロジェクトでは、コンティニュアによって認証された家庭用血圧計や活動量計を市民が購入し、そのデータをNTTレゾナントの提供する健康情報サービス「gooからだログ」上で管理する。運動教室での健康づくりコミュニティの形成と合わせて、管理されている健康データを通じ、筑波大学の医師や、つくば市の保健師・栄養士からの健康維持に関するアドバイスをネット上で受けられるものになった。

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