「今こそ世界に」――“世界3位”携帯事業者のソフトバンク孫社長、「鍵はモバイルとクラウド」SoftBank World 2013

ソフトバンクの孫正義社長が、米Sprint買収後初めて公の場で講演。「モバイルとクラウド、そしてビッグデータ」を今後30年の注力分野とし、「今こそ世界に打って出るよりほかはない」と語気を強めた。

» 2013年07月23日 18時12分 公開
[山崎春奈,ITmedia]

 「紆余曲折があり、お金が多少高く付きましたがようやく完了しました」――ソフトバンクの孫正義社長は7月23日、同社グループのプライベートショー「SoftBank World 2013」の基調講演で、米国3位の携帯電話事業者Sprint Nextelを買収してから初めて公の場で登壇した。世界規模での事業拡大を目指し、「今こそ世界に打って出るよりほかはない」と語気を強めた。

photo 「買収完了」と宣言

 冒頭で、Sprintの買収により、ソフトバンクグループが世界3位のモバイル売上高となったことを発表。「アベノミクスにより経済は復調気味。165カ国にもなるソフトバンクネットワークを築いた今こそ世界に打って出るよりほかはない。日本の強さは技術力だが、これからは“Digital or Die”。高品質なハードと高度なソフトウェアを両立したサービスやプロダクトをを提供しないと勝ち残れない」と述べた。

photo ソフトバンク 孫正義社長

 「迷ったら、遠くを見よ」という言葉で、300年後の世界を想像するところからスタート。2018年には半導体1チップに入るトランジスタの数は人間の脳細胞の300億個を超えるとし、その後も指数関数的に性能は伸びていくだろうと予想した。「ここまで来るとSFの世界」と断りながら、自己学習していく脳型のコンピュータや知的ロボットと共存する生活が必ず産まれるだろうと述べた。「同時通訳メガネや高度で平等な教育、遠隔医療やワークスタイルも進化するだろう。300年前の人類が現在とまったく違う生活をしていたように、これからの300年でもまた大きな変化がある。鍵となるのはやはり情報技術」(孫社長)

photo 2040年時点で3万円のモバイルデバイスに保存可能なコンテンツ量を予想

 2040年を描いて指針を固める「新30年ビジョン」では「モバイルとクラウド、そしてビッグデータ」を注力分野として強調した。スマートデバイスのCPU、メモリ、通信速度のいずれもが現在の100万〜300万倍の性能になると予想し、「超高速ネットワークによる無限のクラウドとのつながりがライフスタイルを劇的に変えるはず。ローカルとの境目がなくなったクラウドは人類の資産に、ソフトバンクにとっても強みになっていく」と話した。

 現在取り組んでいる、電波状況改善への施策も紹介。パケット接続率の調査のため、ソフトバンク以外のキャリアも含め、モバイル端末のアプリ通信ログを独自技術で毎月約7.5億件収集。計300億件のレコードを分析した結果を基地局設置の優先順位を判断する指針としているという。ユーザーに改善の実感があるかを調べるため、TwitterやFacebookの発言を自然言語処理してポジティブ/ネガティブの感情分析も行っているという。

 「テレビCMで宣言できる程度には自信を持って電波状況の改善を進めてきた。ビッグデータを活用するには高度な技術と分析力が必要。アプリレコード分析のため世界で初めてのシステムを開発したように、情報技術の未来を作るために、まずは自社の足元から取り組んでいく」(孫社長)

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