「本社が持つべきケイパビリティ」の提言――欧州企業の調査を踏まえて視点(1/3 ページ)

本社業務に従事する従業員数は、10年前の約2倍の水準となっており規模は年々拡大している。さらに今後本社業務の増加及び多様化が進展すると考えられる。今後本社が持つべきケイパビリティとは? 事例からベストプラクティスを探る。

» 2014年02月17日 08時00分 公開
[中野大亮(ローランド・ベルガー),ITmedia]

(ローランド・ベルガーによる本社機能に関する欧州での調査内容)

2012年に、ローランド・ベルガーは、本社機能の拡大状況の把握を目的として、企業へのアンケート形式による調査を行った。

調査対象企業は86社。欧州企業を中心に、幅広い会社規模/業種の企業を対象に実施した。

質問項目は、現在の本社機能の状況や、今後本社が持つべきケイパビリティのあり方や方向性を問うものを中心に構成した。


1.近年の本社規模の拡大

図1調査対象会社の構成

 これまで本社の業務は、会社理念の明示や、中期経営計画の策定・資金調達・コンプライアンスの順守活動・IT環境整備など、会社運営上必要とされる基本的な要素がほとんどであった。しかし、足元の数年間で、マーケット動向の変化などに伴い、企業の取組みも多角化しつつある中で、本社業務は増加し、本社規模が拡大するという構図になっている。

 実際に、実施した調査結果に基づくと、本社業務に従事する従業員数は、10年前の約2倍の水準となっており(図2)、本社規模は年々拡大していることが見て取れる。さらに、同調査における今後の動向についても、本社業務の増加及び多様化が進展すると回答した企業が約8割であることから(図3)、本社業務の増加ひいては本社規模の拡大という傾向は、今後数年間続いていくと考えられる。

 こうした現状を踏まえ、本稿では、近年の本社規模の拡大に伴い、今後、本社が持つべきケイパビリティの提言を行うことを主な目的とする。また、各提言毎に事例・ベストプラクティスをご紹介したい。

2.マーケット動向の変化

 本社業務の増加の原因となるマーケット動向の変化として、主に「マーケットの地域的な広がり」と「産業のコンバージェンス化/クロスオーバー化」の2つの要素が想定される。

 前者は、既存市場の成長が停滞する中で新興国での経済成長などに起因されるものである。日系企業にあてはめれば、以前は中国市場が新たな成長ドライバーとして脚光を浴びていたものの、一部の産業では成長に陰りが見られ始め、昨今では、ASEANをはじめとする東南アジア諸国が次なる成長市場として注目が集まりつつある。更に、次なる市場として中近東・アフリカも関心をもたれつつあることから、企業が活動する地域は、今後一層拡大していくと考えられる。

 後者は、消費者ニーズの多様化や技術革新などを背景としたものである。消費者のニーズの多様化に伴い、以前は単品販売が主流であった製品が、現在では、複数の製品・サービスを組み合わせて販売されることが多々見受けられるようになった。例えば複合機。従来はコピー、スキャナ、FAX、プリンターなど、個別に販売されていたが、スキャニングとデータ送信を同時に操作したいという消費者のニーズの高まりによって複合機が登場した。これにメンテナンスサービスを加えることで、現在の製品・サービスを提供する複合機ソリューションという"製品"が提供されることとなった。また、"スマホ"の登場は、デバイスとアプリ、コンテンツ販売などが垂直統合され、否が応にも複合的なサービス提供が余儀なくされつつある。こうした傾向は他の製品でも進展していくと考えられ、産業のコンバージェンス化/クロスオーバー化が今後も拡大していく見通しだ。

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