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» 2014年09月11日 08時00分 UPDATE

ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術:コーヒー業界から最新ビジネス戦略が分かる――「戦略は“1杯のコーヒー”から学べ」 (1/2)

いま多くの企業が注目しているホットなビジネス。ひとときの安らぎを提供するコーヒーは差別化の手段となり得る。その戦略とは。

[永井孝尚,ITmedia]

 この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。


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ホットなコーヒー業界

140911book.jpg 戦略は「1杯のコーヒー」から学べ

 いま、コーヒー業界が熱い。

 例えば米国サンフランシスコを拠点とするブルーボトル。 「コーヒー業界のアップル」ともいわれ、GoogleやTwitterといった名だたるIT企業が出資する注目企業だ。初の海外展開の拠点として、間もなく東京の清澄白河に上陸する。

 またネスレは2012年11月、コーヒーマシンをオフィスに無償貸与する「ネスカフェ・アンバサダー」を開始した。日本市場向けに独自開発した斬新なビジネスモデルを展開、2013年に日本マーケティング協会から「日本マーケティング大賞」を受賞した。

 さらにスターバックスやタリーズは、1杯500円から1000円のこだわりコーヒーの販売を始めている。スターバックスは、9月にはなんと1杯1850円のコーヒーも販売する。

 コーヒー業界の外からも参入が相次いでいる。セブン-イレブンが2013年1月から全国展開した「セブンカフェ」。飲んだ人も多いだろう。おいしい本格的なレギュラーコーヒーを100円で提供し、2013年は4.5億杯で500億円もの売上を記録。コンビニコーヒーは一気に広がった。

 なぜ多くの企業がコーヒーに注目しているのか?

 まずコーヒーの習慣性だ。コーヒーは新規顧客を獲得し、固定客化できる手段となり得るのだ。さらに、「1杯のコーヒーで癒やされる」という方は多いだろう。ひとときの安らぎを提供するコーヒーは、コーヒー業界以外の企業にとって、差別化の手段となり得るのだ。

 セブン-イレブンがセブンカフェを始めたのも、まさにこれが狙いだ。また、高機能コーヒーマシンの登場で、店員がコーヒーの技術を持たなくてもある程度おいしいコーヒーを店舗で提供できるようになった。全国1万6千店舗を展開するセブンカフェがブレイクしたのも、富士電機と共同開発した高機能コーヒーマシンによるところも大きい。

 つまり、顧客を定着化でき、差別化を図ることができるおいしいコーヒーが、技術の進化で身近になった。これが今、コーヒーに注目する企業が増えている理由だ。

 またコーヒーは、さらにおいしくできる可能性を秘めている。例えばワインは生産国と消費国が同じで、作り手がおいしい飲み方を熟知して作っている。一方でコーヒーは発展途上国が生産し、先進国が消費している。コーヒー農園では、「おいしいコーヒーを飲んだことがない」という人も多い。このように、コーヒーは作り手と消費者の間のギャップがまだまだ大きい。見方を変えると、このギャップが埋まればコーヒーはずっとおいしくなる。巷で話題の「コーヒーのサードウェイブ」は、ここに注目しているのだ。

 このように、私たちの身近にあるコーヒー業界は、文字通り、いま、とてもホットなのである。

コーヒーはビジネス戦略の宝庫

 もともとコーヒーはエチオピアで誕生した。10世紀頃にはイスラム寺院で秘薬のように用いられたと言われている。ヨーロッパに伝わったのが16世紀。20世紀からコーヒーの大量生産・大量流通が始まり、家庭で飲まれるようになった。

 このように1000年以上の歴史があるコーヒー、実はビジネス戦略に関する学びの宝庫だ。コーヒーの淹れ方一つ取っても、常にさまざまなイノベーションが生まれている。またコーヒーの大衆化が一気に進んだ最近の100年で、コーヒー業界を舞台にさまざまなマーケティングが行われてきた。冒頭のコーヒー業界最新事例でも紹介した通り、いまも最新ビジネス戦略が展開されている。

 私はIT業界で30年間仕事をしてきたが、あるご縁がきっかけでコーヒー業界について学ぶ機会を得た。そしてマーケティングやビジネス戦略の視点でコーヒー業界を捉え直すと、実にさまざまなビジネス戦略の学びが得られることが分かった。

 さらに世の中の人たちにとって、コーヒーはとても身近な題材だ。そこでいま注目されているコーヒー業界を舞台にした、新しいビジネス書を上梓した。それが『戦略は「1杯のコーヒー」から学べ』だ。

ビジネスエンターテイメント小説とは

 本書は架空のコーヒー会社を舞台にして、ドトール、スターバックス、ネスレ、UCC、セブン-イレブン、ブルーボトルといったリアルなコーヒー会社の事例を取り上げ、面白い物語でさまざまな最新ビジネス戦略を楽しみながら学ぶことができるストーリーだ。サクッと楽しく読める物語の中に、さまざまな実践的ビジネス戦略を散りばめるこのスタイルは、シリーズ50万部のベストセラーになった『100円のコーラを1000円で売る方法』で確立したものだ。

 個人的にこのスタイルを「ビジネスエンターテイメント小説」と名付けている。では、なぜ「ビジネスエンターテイメント小説」なのか? それは私が、ビジネスでマーケティング思考や戦略志向が十分に根付いていないことが日本企業の大きな課題と考えているからだ。

 日本企業のビジネスパーソンの現場力は強い。当事者意識も世界トップだ。高度成長期は、日本企業の現場最前線にいるビジネスパーソンが体力勝負で頑張り、成果を上げてきた。しかしいま、競争は世界に広がり、グローバル規模になった。そしてグローバルのライバルたちは、ビジネス戦略の定石を知り尽くして戦略的に勝負してきている。いくら現場の人たちが頑張っても、戦略の定石に則った者が強いということは、私たちは第二次世界大戦の敗戦で骨身にしみて学んだことだ。

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