「自由な着想」と「最先端テクノロジー」の融合でイノベーションが生まれるNTT DATA Innovation Conference 2015リポート(1/2 ページ)

どうすれば既成概念を打ち破り、イノベーションを起こすことができるのか。十分にコモディティ化されたと思われている市場にこそイノベーションの機会が潜んでいる。

» 2015年02月25日 08時00分 公開
[山下竜大,ITmedia]

 NTTデータが1月23日に、開催した年次カンファレンス「NTT DATA Innovation Conference 2015」の主催者講演に、NTTデータ岩本敏男社長が登場。「Technology×Foresight×Global ― 未来を切り拓くITの力」と題した内容で講演。近未来のIT社会の姿を描いた「NTT DATA Technology Foresight 2015」も発表した。

支倉常長から彗星探査に続く人類の革新

NTTデータ岩本敏男社長

 1988年にNTTから分社化してから27年間、増収増益を続けているNTTデータでは、2005年より海外ビジネスを強化。現在、41の国と地域、175都市で事業を展開しており、売上の28%が海外ビジネスによる。また従業員数は、全世界で7万6000人であり、そのうち海外の社員数が4万3000人と、国内の従業員数の3万3000人を上回っている。昨年スペインを拠点とし、中南米ビジネスもカバーするeveris社が新らたにNTTデータグループに参画したことで、中南米の多くの国でもビジネスが展開できるようになっているが、岩本氏は昨年9月に訪問したメキシコで大変興味深い話を聞いたという。

 「実は、メキシコとの通商を目的として欧米に向けた日本初の外交交渉が、17世紀に行われており、その記録がバチカン機密文書館に残っています。伊達政宗の命により、慶長遣欧使節団として派遣された支倉常長が、帆船“サン・ファン・バウティスタ号”で仙台を出発し、スペイン経由でローマを目指しました。このとき伊達政宗がローマ教皇にあてた親書がバチカン機密文書館に保管されています。」(岩本氏)

 「慶長遣欧使節団は、当時の常識であったアフリカの喜望峰を経由するインド周りのルートではなく、太平洋・大西洋をわたる新たな航路を開拓しました。これはまさに、既成概念を超えたイノベーションであり、新しい世界を切り拓いたといえると思います」と岩本社長は評した。

 続いて岩本社長はこの慶長遣欧使節団から400年を経て、人類はテクノロジーを進化させ、ついに彗星にまで到達した事例を紹介。

 「400年前の支倉常長は新たな航路で世界を開拓しましたが、現代という時代は、テクノロジーが次々と既成概念を刷新し、絶えず、世界を押し広げている時代だと考えています。今後、既成概念を超えて世界の限界を切り拓くのはテクノロジーであり、そこで生み出されるものがイノベーションであると思います」と語った。

イノベーションに必要なのは“欠落したままの致命的に重要な何か”を探すこと

 それでは、どうすれば既成概念を打ち破り、イノベーションを起こすことができるのか。岩本社長は、経営学者であるピーター・ドラッカーが、イノベーションに対する最大の賛辞は「なんでこれ、いままでなかったのだろう?」という言葉であると述べたことを紹介。既成概念を超えてイノベーションを起こすにあたっては、「自由な着想と先端テクノロジーが結びついたときにイノベーションが生まれる」として、ダイソンが商品化し大ヒットした「羽のない扇風機」を例に上げた。ダイソンでは、その地域の生活様式を丹念に調査し、潜在化の機能を徹底的に追求し、新しいテクノロジーも活用することで、「いままでなぜ無かったのか」というレベルの新しい商品を生み出している。岩本氏は、「イノベーションの機会というものは、実は“十分にコモディティ化した”と思われているところに潜んでいるのです」と話す。

 その他、眼鏡メーカーのJINSがメガネは視力を矯正するものという既成概念を打ち破り、パソコンやスマートフォンのブルーライトから目を保護する先端テクノロジーの活用により、累計本数400万本の大ヒットを生み出した「JINS PC」なども例に挙げ、「イノベーションに必要なのは“欠落したままの致命的に重要な何か”を探すこと。そこに経済的な効果を一変させる機会がある」との見解を示した。

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