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» 2015年03月12日 08時00分 UPDATE

ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術:僕たちは「会社」でどこまでできるのか?――モーニングピッチ「創業者」塩見哲志氏は、いかにしてイントレプレナーになったか? (1/2)

日本はベンチャーが育ちにくい環境にある。資金面、大企業と取引するための信用など実績重視の評価はベンチャーには不利である。このようなベンチャーの過酷な環境を改善したいと、企業をまたがって立ち上がった20代の若者がいた。

[小杉俊哉,ITmedia]

 この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。


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 今、久しぶりのベンチャーブームである。リーマンショック後、新規株式公開(IPO)が年間19社まで落ち込んだが、昨年は80社程度まで回復し、今年はさらに上積みが予想される。そのムーブメントの火付け役となった「モーニングピッチ」をご存知だろうか?

ベンチャーに過酷な日本の環境

150312book.jpg 僕たちは「会社」でどこまでできるのか? 〜起業家のように企業で働く 実践編〜

 日本はベンチャーが育ちにくい環境にあることは周知だろう。特に設立間もない、アーリーステージのベンチャーは、資金調達が困難である。実績がなければ、ベンチャーキャピタルからの投資を受けることはできない。また、銀行から融資を受けるには、原則的に不動産担保など個人保証が求められ、大きなリスクが伴う。組織運営の経営のサポートも受けられない。

 しかし、日本のベンチャーが育ちにくい最大の理由は、大企業がベンチャーの商品やサービスを買おうとしないことにある。取引を行なうためには、まず資材登録を行なう必要があるが、それには信用調査というハードルがある。これは実績のない、あるいは乏しいベンチャーには当然不利である。

 例えば、米国のシリコンバレーなどでは大企業の経営者は、おもしろそうな技術や製品を試してみる。そのようなものを常に探している。そのための目利きができる人材を多数抱えている。それにより、他社よりも早くよい製品やサービスを手にし、また場合によっては投資し、時に企業ごと買収するのだ。また、自らベンチャーから出発した経営者たちは、常に地域の新しい後輩経営者を発掘し、彼らを支援しようとする仕組みが出来上がっている。

 このような、ベンチャーのとって過酷な環境をどうにか改善したい。アベノミクスでいくら大企業の業績が回復しても、ベンチャーが次々と興って来なければ日本経済の真の復活はない、と企業をまたがって立ち上がった20代の若者がいた。当時27歳の塩見氏、志を同じくして立ち上がったのが、トーマツベンチャーサポート斎藤氏29歳、スカイランドベンチャーズ木下氏26歳の3人だった。

ベンチャーの登竜門モーニングピッチ

 モーニングピッチは、毎週木曜日の早朝7-9時にベンチャー経営者5名が、企業の事業開発担当者やメディア関係者の前で事業のプレゼンテーションを行ない、それに対して質疑応答が行なわれるというものだ。2012年1月の開始からすでに三百数十社が登壇している。この場を野村證券という業界最大の証券会社が支援するということにより、ベンチャーの信用補完をしている。今では、テレビ、新聞、ネットなどさまざまな場面で取り上げられ注目を集めている。老舗企業や経済産業省の官僚も参加するようになり、国を挙げての取り組みとなっている。また地方開催や、特定の企業での出前モーニングピッチも盛んに行なわれるようになった。

 その中から、IPOするベンチャーも出てくるようになり、野村證券も主幹事を獲得することにより会社の事業への貢献も進んでいる。

 しかし、野村證券だからベンチャー支援をした、のではない。もとより、証券会社はIPOの主幹事や、上場企業の資金調達を行なうことで収益を上げるのであり、アーリーステージのベンチャーの支援を行なうということに関しては、当然のことながら当初は社内でさまざまな抵抗があった。

 そのため、上述のように、別の会社に所属する3人が自発的に集まり、自律的に運営を行なったことが成功の鍵であった。すなわちオープン・イノベーション。社を越えて、共通の概念を共有し、考えを持ち寄り、社内のヒエラルキーと無縁だったことが、運営に生かされた。

 例えば第1回目は、IPOに向けて株式公開のプロが助言を行なうという目的で開催された。たまたまオブザーバーとして参加していた2人の事業会社の人のアドバイスがより有効であったというフィードバックが登壇したベンチャーの経営者側からあった。その発見を即第2回目に生かすことにした。こうして、モーニングピッチは、ベンチャーと事業会社の橋渡しとして、新しい価値を生み出すというプラットフォームになったのだ。

 それを可能にしたのが、既存の組織によらない、社外メンバー同士で、しかもボランティアで始めた行動であったことだった。

 その後、サポーターでもある参加企業は増え続け、数十社に登っている。また、地方開催や、サポーター企業内で行なう「出張モーニングピッチ」も盛んに行なわれ、企業とベンチャーを結びつける機会は確実に増えている。他の証券会社も、形態は異なれ同様の動きが増え、大きなムーブメントになっている。

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