業界の常識を疑うことで実現したのは、「No」をいわない徹底した「お客さま視点」のサービス経営トップに聞く、顧客マネジメントの極意(1/2 ページ)

これまでの旅行業界の常識を疑うことろから立ち上げたビジネスモデルは、人生の分岐点になるような旅を提供したいという思いから。感動につながる旅工房の旅行とは。

» 2015年08月26日 08時00分 公開

 旅工房の創業は1994年。海外旅行・国内旅行を取り扱う旅行会社だ。インターネット販売で急成長を遂げ、お客さま視点に立ったオーダーメイドの旅を提案している。各地域専門のトラベル・コンシェルジュが専任担当制でお客さまのご要望をヒアリングし、一人ひとりに合わせたオーダーメイドの旅行プランを設計。大手旅行会社とは異なるビジネスモデルを採ることで柔軟な対応を可能にし、徹底したお客さま視点の細やかなサービスを実現している。時代のニーズを読み取り、高いリピーター率を誇る今注目の旅行会社だ。会長兼社長の高山泰仁氏に話を聞いた。

インターネットを使った旅行サービスを提供

井上 現在の旅工房ができるまでの経緯を教えてください。

旅工房 高山泰仁会長兼社長

高山 旅行業界に興味を持ったのは、高校3年生の夏でした。卒業後の進路に迷っていたとき、旅行会社についての本を読んだことがきっかけです。その本には、机と電話があれば、旅行会社は簡単に始められると書いてありました。

 25歳で旅行会社を起業すると決めて、高校卒業後は専門学校に進学しました。旅工房ができたのは1994年です。24歳のとき、創業メンバー5人のうちのひとりとして働き始めました。創業したものの経営がうまくいかず、借金が膨らみ続ける状況が数年続きました。そんな中、私が社長に就任したのは1996年のことでした。ちょうどWindows95が発売されたタイミングです。初めてパソコンを購入し、インターネットを使って旅行サービスを提供しようと動き始めました。

トラベル・コンシェルジュがオーダーメイドの旅を設計

井上 お客さま一人ひとりに合わせた旅の実現を掲げ、専門性の高いトラベル・コンシェルジュが旅の提案をしているそうですね。具体的にはどのようなことをしているのですか。

高山 一般的な旅行会社は、予約・企画・手配のそれぞれの機能ごとに部署が分けられており、効率を最も重視しています。組織の構造上、お客さまからの細かな要望に応えることは難しく、パッケージプランの提案に終始することがほとんどです。一方、旅工房では、旅先の方面ごとにチームを作り、そのチーム内で予約・企画・手配のすべてを対応しています。各チームには、担当方面についての知識と経験があるメンバーが集められます。お客さまからのご要望を聞き、柔軟に対応できる体制となっています。

 例えば、ハワイに4泊滞在する場合、最初の2泊は宿泊費が安めのホテル、残りの2泊はデラックスホテルというように、滞在中にホテルを変えることもできます。一般的な旅行会社では、滞在中は同じホテルに宿泊することがほとんどですが、旅工房ではお客さまのご希望に合わせて旅行プランをアレンジできます。

 目指しているのは、お客さま一人ひとりのスタイルに寄り添った旅の実現です。非効率な部分もありますが、お客さまにとってメリットが大きいのは旅工房のやり方ではないでしょうか。

お客さま視点のサービスを実現する独自のビジネスモデル

井上 お客さま視点を重視しているからこそ、今の旅工房のモデルが出来上がっているのですね。

高山 私たちのビジネスモデルは、これまでの旅行業界の常識を疑うところから作られています。従来は、ホテルや航空会社からのキックバックによって成り立っていました。極端にいえば、飛行機に乗って、ホテルに宿泊してもらい、無事に帰ってきてもらえれば、利益を上げることができるのです。満足度を追求するよりも、効率を上げ、できるだけたくさんの人に旅行へ行ってもらうことを目指しているといえます。効率よくお客さまを集客するために駅前に店舗を構え、パンフレットをたくさん並べ、既成の旅行商品を販売しています。

 私たち旅工房は、お客さまの視点に立つことを最も重要視しています。一人ひとりに合わせた旅を提案するための、独自のビジネスモデルを採用しています。店舗を構えず、パンフレットも作っていません。一般的に、パンフレットを作るには、1冊で約100円のコストがかかっているので、これだけでも大きなコストダウンになるのです。コストを抑えた分をお客さまに還元し、商品の質と丁寧な対応に力を入れることで、リピーターを増やしてきました。

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