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» 2016年05月25日 08時00分 UPDATE

激変する環境下で生き残るためのTransformation 〜コニカミノルタの事例に学ぶ〜:第2回:「強みを生かした」戦略で事業の構造を変える (1/2)

中計で掲げたTransformの実践、そこに不可欠なのは企業の「強み」を「てこ」にした戦略だ。今回は、コニカミノルタの主力事業である情報機器事業の戦略の考察を通じて、その重要性を検討してみたい。

[井上浩二(シンスター),ITmedia]

 「競合との競争も大事だが、業界を破壊するかもしれない変化への対応を優先すべきとの考えで、2011年以降の戦略を策定して手を打ってきた」コニカミノルタ取締役会議長の松崎氏(※「崎」は正式には旧字の立つ崎)は、同社の主力である情報機器事業のTransformationの軌跡を振り返り、このように語っている。前回のコラムで見たように、2010年当時の情報機器業界は非常に厳しい環境下に置かれており、業界での競争は厳しさを増していた。そのような環境下で、「変化への対応を優先」させながらも、競争に振い落されずにビジネスを推進するという戦略は、具体的にどのようなものであったのだろうか。今回は、同社の2011年以降の情報機器事業戦略の考察を通じて、競争に打ち勝ちながらもTransformationを進めるためのポイントを考えてみたい。

 現在も続く同社の情報機器事業のTransformationの最初の布石は、2010年末に打たれている。それは、米国All Covered Inc.の買収である。All Covered Inc.は、西海岸をベースに中堅・中小企業の顧客に対してITソリューションを提供しており、社員数は300名程度の中堅企業であったが、それまでM&Aを行って成長して来ていたため、全米21都市のカバレッジを有していた。また、これまでの実績から特定業種のヴァーティカルなソリューションの強みも持っていた。コニカミノルタは、この企業の買収を手始めに、より深くお客様の懐に入り込み、BPRに近い形で業種ごとにコンテンツ・マネジメントを提供できる力を培ってきたのである。

 「同じ業界のプレーヤーを見ているだけではいけない」「他社がやっていないことをやらなければいけない」松崎氏は2010年に「GPlan2013」を策定するに際して、このように考えて戦略を策定したと語っている。当時、競合各社もサービス事業への転換の必要性を認識しており、MPS(Managed Print Services)を強化していた。そのために、2009年にゼロックスはITサービス大手の米Affiliated Computer Servicesを総額64億ドルで買収し、キヤノンとリコーはそれぞれHP、IBMと提携し、ITとの複合サービスを展開し始めていた。これら大手競合企業は、大企業をターゲットにMFPやプリンターなどのFacilitation Managementを行い、プリンティングコストを削減するアウトソーシングサービスを提供していた。

 このようなサービスは、ITのアウトソーシングと同様、サービス・イン当初は付加価値サービスとして認められるが、経年と伴にコスト削減を要求される厳しいビジネスである。これに対して、コニカミノルタがターゲットとしたのは、自社の主要顧客であるSMBマーケットであった。自社の大きな強みである顧客基盤を生かしたビジネス展開を、戦略の軸に据えたのである。中小企業は、ITに明るい人材が不足しているという課題を共通に持っていた。そこで、このマーケットに対し、PCやネットワークも含め、IT全体を管理するMIT(Managed IT)サービスを提供することで、ITソリューションとMFPを組み合わせて提供していくというハイブリッド戦略を展開しようと考えたのである。

 M&Aに関しては、その効果を最大化するために、実行に際しては以下の点を徹底的に考えて候補を選定していると松崎氏は語っている。

  • M&A先がコントローラブルか(不測の事態には自分たちで経営できる)
  • 当社のお客様は誰か(M&A先の持つ顧客基盤・強みとの整合性がある)
  • M&A先の経営者の資質

 つまり、自社にはないITスキルとITソリューションプロバイダーとして、市場からの認知を獲得するために、この選定基準に合致していたAll Covered Inc.を買収したのだ。All Covered Inc.を得た同社は、西海岸からハイブリッド戦略に着手するわけだが、この後の展開が非常に興味深い。同社は、All Covered Inc.の目利き力も活用して、2011年に米国で、IT企業6社を立て続けに買収している。これらの買収では、同社のもう一つの強みである既存の直販拠点を生かす形で、全て拠点を展開している地域で行っている。つまり、コントローラブルなやり方でありながら、スピーディーにハイブリッド戦略を展開できる手法で、新たなビジネス基盤を構築しているのだ。

 更に目を見張るのは、欧州での展開の速さである。米国でM&Aによる試行を行った同社は、同じ手法を欧州にも水平展開し、それぞれの国・地域の事情に合ったサービス展開を行える比較的規模の大きくないIT企業を買収している。買収金額は多くても30〜40億円程度と見られるが、2011年には、スウェーデンでKoneo ABを、2012年にはドイツで地域の小規模IT企業を買収して規模を拡大し、SMB市場にビジネス基盤を保有するRaber+Marcker GmbHを、フランスでパリ以北にサービスを展開していたSerians S.A.S.を買収し、同様のビジネス基盤を急速に作り上げたのである。

 このような取り組みの結果、米国ではMFPとITソリューションのセット販売が2012年度には50%を超え、2013年度には65%にまで達している。そして、欧州ではA3MFPの出荷台数ベースのシェアが19.3%になり(2011年は17.5%)、シェアNo.1を獲得している。2013年に、正に「MFPの事業転換がReady状態になっている」という目標を達成したのだ。

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