ベールを脱いだ「Oracle VM」、アプリケーションの統合基盤も2.0にOracle OpenWorld 2007 San Francisco Report(2/2 ページ)

» 2007年11月13日 12時30分 公開
[浅井英二,ITmedia]
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 フィリップス社長は、「これまで企業は、大量のコンサルタントを雇い、断片化された複雑な製品を組み合わせて個別の業務に対応してきた。われわれは、(2004年暮れの)PeopleSoft買収以降、三十数社を傘下に収めたが、その狙いは、SOA(サービス指向アーキテクチャー)の標準技術をベースとして、これらをモジュール化し、再利用できるようにすることだ」と話す。

 Oracleはこれまで、AIAのフレームワークに基づき、Oracle Fusion Middleware SOA Suite上で、レイヤの異なる2つのコンポーネントを提供してきた(下の図を参照)。

(クリックすると拡大)

 ひとつは、業界ごとにまとめたビジネスプロセスのベストプラクティスである「Industry Reference Models」だ。アプリケーションに依存しない、企業のバリューチェーン全体を抽象化したものといえる。

 もうひとつのコンポーネントは、Oracleの複数のアプリケーションにまたがるビジネスプロセスがあらかじめ構築された「Process Integration Packs」。定義済みで連携が保証されているため、コストやリスクを伴うような統合作業は必要としない。例えば、「Order to Cash」では、フロントオフィスアプリケーションのSiebel CRMとバックオフィスアプリケーションのE-Business Suiteが統合され、受注管理から出荷業務に至る一連のビジネスプロセスを実行できる。業界ごとの標準的なデータモデルに基いて、共通のオブジェクトとサービスがリポジトリで可視化されており、これを媒介として複数のアプリケーションにまたがる一連のビジネスプロセスを実行可能とする仕掛けだ。

コンサルタント不要? 線で結べばアプリ統合

 基調講演でフィリップス氏とロズワット氏が、デモを交えながら、多くの時間を割いて説明した「AIA 2.0」では、新たなコンポーネントとして、「Foundation Pack」が追加された。

 Foundation Packは、OracleがProcess Integration Packsを開発するために内部で活用してきた共通のオブジェクト「Enterprise Business Objects」と共通のサービス「Enterprise Business Services」、それらを可視化するリポジトリなどを顧客にも開放するものだ。

 上の図を見ても分かるとおり、Foundation Packは、これまで欠けていた部分を埋めるピースだ。顧客やパートナーらは、Foundation Packを活用し、Oracle以外のアプリケーションや独自開発のアプリケーションのビジネスプロセスもAIAの下で統合できるようになるという。

 ステージでは、ビジネスモデリング機能を利用し、既存のビジネスフローに「承認」プロセスを追加し、自社の業務向けにカスタマイズするデモも行われた。フローチャートに承認のポイントを追加し、その機能を提供しているOracleのアプリケーションとマウスで結びつけてやるだけだ。

 「大量のコンサルタントを雇うか、あるいはマウスで線を引くだけか、どっちがいい?」とロズワット氏。ビジネスアナリストがモデリングした成果は、標準のBPELでリポジトリに格納され、デベロッパーと連携しながら効率良くカスタマイズを進められるという。

DEC Rdbの責任者だったロズワット氏は、同事業がOracleによって1994年に買収されたのに伴い、同社に移籍、現在ではデータベースの開発を統括している

 Oracleはこの日、アプリケーション分野で競合するSAPに対して、揺さぶりをかけるのも忘れなかった。同社は既にCRMやPLM(Product Lifecycle Management)とSAPのERPを連携する、あらかじめ構築済みのProcess Integration Packsを提供しているが、これを一般消費財製造業や、プロセス製造業、ハイテク製造業に向けても拡大していくという。

 同社によれば、SAPユーザー企業の30%は、Oracleのアプリケーションも導入しており、2つのシステムの低コスト、低リスクでの統合が求められているという。

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