政府や自治体、企業などで事業継続への関心が高まるっている。BCM(事業継続管理)やBCP(事業継続計画)を本格的に導入する動きが活発化している。
企業が災害や事故で重大な被害を受けた場合、いかに重要業務を継続して行うことができるか。あるいは中断したとしても、可能な限り短い時間で事業を再開することができるかが企業の大きな課題となっている。
これらを「事業継続」と呼ぶが、この事業継続を追求する計画を「事業継続計画」(BCP:Business Continuity Plan)と呼び、BCPの策定・運用・見直しまでの戦略的な運営を「事業継続マネジメント」(BCM: Business Continuity Management)と呼んでいる。
事業継続の考え方は、1950年代の冷戦只中、旧ソ連からの核攻撃を想定した米連邦政府の存続計画(Continuity of Government;CoG)に始まったともいわれる。その後、ホームランドセキュリティを背景にしたCOOP(Continuity of Operation;行政機関による事業継続)が策定され、テロや大規模自然災害などに対するコンティンジェンシープラン(危機管理計画)や災害復旧計画の策定とともにBCPが発展し、BCMを重要視する傾向が高まっていった。
不測の事態といえるインシデントもこの10年間に数多く発生している。下記は記憶に新しいところだろう。
特に、BCM/BCPへの関心は、9.11の米国同時多発テロ以降が急速に高まった。多くの企業が被害を受けた中、バックアップセンターを機能させた企業の早期復旧が注目されたが、WTCの近隣区域が長期間閉鎖され、磁気テープの持ち出しができず復旧不可能だったケースや、WTC崩壊後の浮遊物によって約4000台ものワークステーションやPCを新規調達したなど、BCP未対応で損害を拡大させた企業も数多く存在した。
基幹システムにおける1時間当たりのダウンタイムコストも莫大になっており、例えば金融決済業務で645万ドル、クレジットカード与信では260万ドル、オンラインオークションでも22.5万ドルにも上るという試算もある。
長岡技術科学大学大学院技術経営研究科准教授で内閣官房重要インフラ専門委員会委員等を務める渡辺研司氏は、「効率的なシステム上に、企業の商品やサービスが国をまたがって提供されている現代社会では、特定の企業やプロセスで発生した障害が急速かつ広範囲に伝播するため、事業継続することが困難な時代になった」と危機感を表す。
ゴーイングコンサーン(継続的に事業活動を行うこと)を前提とした企業の存在が、いとも簡単に想定外の出来事で危機に陥る。反対に、インシデント対策を打つことで存続し続ける企業は、対策しなかった企業に対して競争優位性を持つことにつながるという。
「BCM/BCPへの投資効果を疑問視する経営者も多いが、事業継続は企業として当然の義務であり、もはや必要経費と考えるべき」と強調する渡辺氏は、災害による生産遅延やサービス停止は免責事項に含まれなくなったと指摘する。
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