サブプライムローン問題の全貌がなかなか分からず、暗雲が世界中を覆っているが、日本の株価が大きく下落している要因には幾つかの理由がある。
2008年は年初から世界的に株価が大幅下落する波乱の展開となった。サブプライムローン問題という全貌がなかなか分からない暗雲が世界中を覆っていることが主因だ。ただし、日本の金融機関のサブプライムローン問題による負の影響は欧米に比べれば大きくはない。そうした状況で日本の株価が大きく下落しているのは、外人投資家の売りなどがあった時に、それに対し国内勢が自信を持って買い向かえないことも一因であろう。
日経平均株価のグラフと2000年から作成されている「景気ウォッチャー調査」の現状判断DIのグラフを重ねると、転換ポイントがよく似ていることが分かる。「景気ウォッチャー調査」の現状判断DIは、データ発表の速報性に加えて景気に対する先行性があることが特徴だ。
「景気ウォッチャー調査」での景況感悪化の理由にサブプライムローン問題を挙げる回答は極めて少なく、建築基準法改正の影響やガソリン価格、生活必需品の上昇などの要因が挙げられることが多い。「景気ウォッチャー調査」の分野別構成では家計動向関連の仕事をしている人が全体の7割なので、昨年央からの消費マインドの悪化などが響いていることが分かる。
しかし、個人消費の実際の数字は意外と底堅い。例えば、消費総合指数・月次データでは07年7〜9月分の平均は110.0で10月分110.1、11月分110.3と緩やかな増加基調が続いている。家計調査の実質消費支出(除く住居等)の10〜12月期の前期比は0.6%増だ。乗用車販売台数の10〜12月期の前期比は3.8%増である。
身近な1月の数字もしっかりしている。08年1月分のJRA(中央競馬会)の売上げは前年比2.1%増で年間売上げ11年ぶりのプラスに向けて幸先の良いスタートとなった。大相撲初場所千秋楽には白鵬と朝青龍の結びの一番に史上第4位の48本の懸賞がかかった。箱根駅伝のテレビ視聴率は前年より下がった。買い物や旅行などで外出している人が多かったのであろう。
消費実態より消費者のマインドは悪い。その理由の中に過度な物価上昇懸念などがあるように思える。日銀の「生活意識に関するアンケート調査(07年12月調査)」によると1年後の物価上昇予想の平均値は7.3%と高い。ガソリンや生活必需品の上昇を意識しているのだろう。しかし、実際の消費者物価の見通しで1年後に1%を大きく上回るとみるエコノミストはいない。通信費や教養娯楽用耐久財の下落により、人々が思っているほど全体の物価は上がらず、実質購買力はそれほど落ちないのである。
「景気ウォッチャー調査」の現状判断DIの低下か、消費者のマインドの悪化を反映しているとすると、どこかで消費マインドがしっかりしている実態に接近し、現状判断DIが反転しよう。
サブプライムローン問題への対応として米政府は1500億ドル規模の対策を発表した。FRBもすばやい利下げで対応している。財政金融政策の効果もあり、米国経済は落ち着こう。現役が共和党大統領の下での大統領選挙の年は景気がしっかりするという従来の景気のジンクスが働く可能性は大きいだろう。夏季オリンピック年のOECD諸国の経済成長率は前年を上回るというジンクスもある。
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明治学院大学 経済学部准教授