基幹システムに蓄積されたデータを活用するためにBIツールを導入したものの、業績向上にうまくつながらない。そんな悩みを持つ企業は少なくないだろう。武蔵野 代表取締役社長の小山昇氏は、「効果が出ないのは、現場でBIを使っていないから」と断言する。
小山昇(こやま・のぼる)氏
1948年、山梨県生まれ。小山氏が率いる武蔵野はダスキン事業を中心とした、オフィス、家庭向け環境関連商品のレンタル事業や経営サポート事業を手がける。同社は2000年、日本経営品質賞受賞、05年「IT経営百選」最優秀賞を受賞。小山社長はITコーディネータ協会からITコーディネータ・グランドファザーに任命されるなど、IT活用には積極的。『社長! 儲けたいなら数字はココを見なくっちゃ!』(すばる舎)、『朝30分の掃除から儲かる会社に変わる』(ダイヤモンド社)など、著書は多数。
武蔵野では、いち早く現場でのデータ活用を進めてきた。エクセルのピボット分析は、10年以上前から現場レベルに定着。事業の成長とともに扱うデータ量も増えたため、数年前からBIツールの「DataNature」を導入しているが、これもいまでは一般社員に広く浸透している。積極的にBIを推進してきた意図は、はたしてどこにあるのだろうか。
ITmedia 多くの企業にとって、データの有効活用は大きな課題の1つです。御社がいち早くデータ活用に取り組んだのはどうしてですか。
小山 データを分析するのは、知りたくない現実に向かい合い、先手を打ってアクションを起こすためです。業績が伸びているときは、誰でも数字でそれを確認するのを厭いません。しかし、業績が伸びなくなった途端に数字を見るのが怖くなり、無意識のうちに目を逸らしてしまう。決算の数字が上がって現実を突きつけられたときには、もう手遅れ。後手に回った対応しかできません。
それを避けるためには、データを分析して業績につながる先行指標を見極め、継続的にモニタリングすることが大切です。そこで異常値が見つかれば、すぐに具体的なアクションを起こして対応すればいい。BIは、こうした一連の対応ができる環境を整えるための最初の一歩です。
ITmedia 同様の目的でBIを導入しても、活用できていない企業が多いようです。原因は何でしょうか。
小山 BIが分析のための分析になっているからではないでしょうか。データを分析するだけでは売上は増えません。分析後に具体的なアクションに結び付けて、はじめてデータを活用したといえます。
では、アクションを変えられないのはなぜか。それは、BIは経営企画部門のものだという間違った認識があるからです。アクションを起こすのは現場の社員ですが、現場を離れた経営企画部門がデータ分析して戦略を打ち出しても、現場の社員にはリアリティがない遠い世界の話にしか聞こえない。アクションを変えたいなら、現場の社員自身にデータを分析させるべきです。
ITmedia 例えば御社では、現場でどのような分析がされているのですか。
小山 弊社の経営サポート事業の例で説明しましょう。経営サポートは、主に中小企業に経営指導を行う事業ですが、事業立ち上げから3年間は、お客様のリピート率は約50%でした。ところが4年目はリピート率が急に70%に上がった。そこで因果関係を分析したところ、直接お客様のもとに出向いて経営指導を行う新サービスを開始したからだと分かりました。その結果を受けて、経営サポートは新サービスの強化に乗り出しています。この分析を行ったのは現場の社員であり、自らの手で分析したからこそ新サービスの強化に積極的に動いたのです。
その他、弊社の事例は『社長! 儲けたいなら数字はココを見なくっちゃ!』(すばる舎)でも数多く取り上げています。機会があればぜひ参考にしてください。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授