戦後、日本の代表的な産業となるまでに発展を遂げた自動車産業。その競争力の秘密は果たしてどこにあるのか。また、今後も競争力を保ち続けることはできるのか。
日本の自動車メーカーはなぜこれほど成長を遂げられたのか――この秘密に迫った1冊の書籍がある。「なぜ日本車は世界最強なのか」(PHP新書)がそれだ。著者であるシーメンスPLMソフトウェア日本法人代表取締役の三澤一文氏は、本著の中で日本の自動車メーカーの強さの1つに新車開発のスピードの速さを挙げる。
3月19日、ITmediaエグゼクティブセミナーが開催された。その基調講演で三沢氏は日本企業の強みと今後の自動車産業の展望を解説。それによると、日本の自動車メーカーがさらなる発展を遂げるためには、いくつかの課題を乗り越える必要がありそうだ。
三沢氏によると、新車の開発ライフサイクルは自動車メーカーの業績と密接な関係があるという。市場が成熟し、競争がさらに激化する中では、開発ライフサイクルが短期化するほど消費者の購買意欲を刺激でき、売上を伸ばすことができるからだ。逆に、開発ライフサイクルが長ければ、「販売推奨金をインセンティブにしなければ売上が期待できず、その結果、自動車メーカーの利益が圧縮されることになる」(三沢氏)。
かつて、自動車産業で圧倒的な存在感を誇っていた米国の自動車メーカーが競争力を失ったのも、開発ライフサイクルの視点からその理由を説明できるという。2003〜2007年において1台の新車がショーウィンドウに陳列される、いわゆる“旬の期間”をみると、ゼネラルモーターズ(GM)の自動車が3.1年であるのに対して本田技研工業の自動車はわずか2.1年足らず。必然的に米国メーカーは値引き販売を迫られ、得られる利益は低く抑えられる一方で、日本車メーカーは値引き販売を避けることで十分な利益を確保でき、かつ、シェアを伸ばすことに成功したというわけだ。
とはいえ、開発ライフサイクルの短期化は容易なことではない。
「開発ライフサイクルを短くしようとすれば、基本設計が不明確であったり、開発途中で基本設計に変更が生じてしまったりといった事態が発生しやすくなってしまう。その結果、製品の品質が低下してしまうことも十分に考えられる」(三澤氏)
そうした事態を回避するために、メーカー各社は十分な開発技術者を確保するとともに、各種のITツールを活用した開発環境の整備が、もはや欠かせないものとなっているという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上
早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授