中堅企業のITエグゼクティブにとって、考える時間を見つけ、戦略的イニシアティブに取り組むことは、認められるどころか、いまだに困難なチャレンジだ。
ファースト・モーリス信託銀行のITディレクター、ヘン・ティム・バッフォ氏は、次にサーバの調子が悪くなったときの対処よりも、もっと先のことを考えなければならないと考えていた。そこで彼は経営幹部のもとへ赴き、IT部門の規模を倍増するように求めた。すなわち、自分をサポートできる人間を1人雇って欲しいと申し出たのだ。バッフォ氏は世俗的な管理業務よりも、エンタープライズレベルのプロジェクトに専心したかった。もっと戦略的になりたかったのだ。
「日常的なサポートの問題は、私の机の上から排除したかった。そうすれば、WANや電話システムのアップグレードに全力を投入できるからだ」と同氏は語る。「時間的な余裕が得られたら、もっと前向きに動くことも可能になる。それらは同時に実現できるはずだった」
戦略的になる時間がない。それは中堅企業のITエグゼクティブに共通する嘆きだ。今回の調査に回答したCIOの60%近くは、戦略的アクティビティのための時間が必要としている。大規模な中堅企業以外の大多数のCIOは、戦略的アクティビティに割ける時間が50%以下と回答している。
この課題には、2つの要素がある。大きな構想を練る時間を見つけることと、そのビジョンが投資に見合うだけの価値があることをビジネスエグゼクティブに認めさせることだ。「CIOが戦略的思考をすれば、社内的なポジションはさらに向上するだろう」と語るのは、ニューヨークの人材スカウト会社、バッタリア・ウィンストン・インターナショナルのテクノロジープラクティス担当パートナー、カーステン・スミス氏だ。「どの産業であるかを問わず、クライアントが第1に求めるのは、戦略的ビジネス思考ができる人材だ。企業は市場や産業、顧客、効率性を理解するCIOを求めている。必要なのは技術一辺倒のCIOではなく、プロセスを理解するストラテジストなのだ」
バッフォ氏にとって時間を見つけることは、インフラ問題を片付けなければならないことを意味した。メインフレームのデータにアクセスするフロントエンドのクライアントアプリケーションはセットアップが難しく、メモリリークが激しい。その他のソフトウェアにも問題もあり、ユーザーのOSはすぐフリーズする。リカバリするためには、完全に電源を落とさなければならなかった。
「われわれにとって重要なことは、世俗的なものを切り分け、それらをまとめてトラブルの原因となっているシステムから他へ移すことだった。最も時間を食われるトラブルはなにか? それらを1つずつ解決し、回避する方法を考えた。その結果、以前は1日中トラブルシューティングに追われたものだが、今は自分の時間の70%を会社の収支を改善するための戦略に振り向けている」とバッフォ氏。
そうした戦略には、イントラネットの構築やMicrosoft SharePointの導入、ビジネスの生産性やオペレーションの効率性を高めるワークフロープロセスの作成などが含まれる。またセキュリティの改善についても、より多くの時間を割くことが可能になった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上
早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授