【第4回】どうやって戦略立案の時間を作るかCIOの実態(2/2 ページ)

» 2008年05月02日 07時00分 公開
[Michael Ybarra,ITmedia]
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煩雑な業務から解放されることがカギに

 ニューメキシコ学生ローンのIT担当副社長、ポール・パディラ氏の場合、ダメージコントロールに多くの時間を奪われている。「われわれにとって、それは大きな問題だ。プロダクションやサービスに問題が発生すると、思いのほか手間がかかる。なぜそのような問題が生じたか、今後どのような回避策を取るか、いちいち説明しなければならないからだ」

 パディラ氏のようなITエグゼクティブは、さまざまな方向から腕を引っ張られる。部下のITスタッフに基本的なサービス管理の原則と慣行をオリエンテーションすることに多くの時間を割かれ、その一方で、経営陣からはハイレベルな戦略思考を求められる。「われわれのCEOは、トップレベルのチームにもっと戦略的になる必要性がある、と常に強調している」と同氏。

 そうした時間を作るのは、必ずしも容易ではない。パディラ氏は、戦略的な時間を配分しなければならない領域は数多くあるという。例えば、ITILサービス管理、技術開発のためのサービスオリエンテッド・アーキテクチャ、注目を集める新技術やインフラ管理の研究、プロジェクトポートフォリオ管理、戦略計画の実行などだ。

 コロラド州コロラドスプリングスのクラシックホームズのCIO、ブライアン・ゴウルド氏の場合も状況は同じだ。ゴウルド氏はしばしば、戦略的アドバンテージを約束する新技術への投資を会社に進言している。しかし経営陣の反応はたいてい、もっと別のことに資金を使うべきだという反論だ。

 「会社の資金は無限にあるわけではない」と同氏は言う。「例えば20万ドルあれば、『他に必要なものを買える』。ITより投資回収率の高いものは、他になにがあるだろう? われわれのエグゼクティブはITに対する理解を深めているが、いつもそうした議論の繰り返しだ。いまのところ会社は、テクノロジーはテクノロジー、という見方しかしない」

 そうした状況の中でゴウルド氏が心掛けていることは、可能な限り多くの仕事を5人の部下に任せることだという。

 「煩雑な業務から解放されると、分析などの仕事に多くの時間を振り向けられるようになる。権限委譲できない仕事はそれほど多くない。スタッフの裁量で仕事をさせたい。プロジェクトを一任すれば、それがキャリアを積む上で大きな資産になるはずだ」と同氏は語る。

 しかし、2つの事業部で働く300人の従業員をサポートしなければならないため、ゴウルド氏の自由になる時間は限られている。「どのテクノロジーが会社にとって最適か、5年後のわれわれはどうなっているか、といったことを考える時間がほとんどないことだ」と同氏は苦悩する。「ERPの修正が最優先だが、毎日1時間か2時間ほど、できるだけ時間を作ろうと努力はしている。その時間に今後の展望や、会社の成長にどのように貢献できるかを考える」

 それはたいていマルチタスキングな作業になる。技術情報誌や業界紙を読みながら、ジムでフィットネスバイクにまたがるようなものだ。

 「ウイークエンドはそういう風に過ごすことが多い」と同氏は付け加えた。

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