IT導入において、トップとCIOだけではなく、他の各部門役員の存在は、意外に大きなものである。信じられない「奇行」も笑って済ませることはできない。
通常、ITとの関わり方でテーマになるのはトップかCIOである。理由はトップの関わりがIT導入成功のための最も重要な要素であるからであり、CIOはITに関わることが任務そのものだからである。
しかし、彼らを除く経営者が取り上げられることは、多くない。なぜだろうか。トップとCIOさえ充分関わっていれば、IT導入は成功するからだろうか。IT導入の際、その他経営者を当てにできないからだろうか。ユーザー部門を語るときに、そこを管轄する役員も含まれていると考えられるので、あえて別途取り上げて議論する必要がないからだろうか。
いや、そんなことはない。単に忘れ去られているのだろう。なぜなら、ITを語るときに彼らは、注目されるトップ・CIOと情報システム部門との間にいるニッチな存在だからだ。しかし、役割は極めて重要なのである。
ITが絡んだとき、トップをサポートできないダメ役員がいかに多いことか、筆者は現役時代、あるいはコンサルティングを通じて複数の企業で実感してきた。
A社のB取締役経理部長は長年CIOであったが、ある時Cが役員として親会社から派遣され、新たにCIOに任命された。Cは早速Bの路線を修正して、メインコンピュータを撤去し、パソコンでネットワークを敷いて、クライアントサーバーシステム導入の計画を立案、トップの承認を得た。
プロジェクトチームが稼働を始めたが、Bは機会あるごとに新システムにケチをつけ始めた。陰に陽に「新システムは必ず失敗するぞ」と噂を立て、些細なことに異議を唱えた。信じられない子供じみた話だが、Cは負けずにシステムを完成させた。裏には自分の立場を奪ったCに対する対抗心があっても、表向きは論理的、理性的にプロジェクトに対する反対を述べるならまだしも、社内で先頭に立って根拠のない噂を立てるなど、戦略としても幼稚だ。
感情的になって反対のための反対に終始する、こうした「お子様役員」は意外に生息率は高いようだ。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授