ガートナー ジャパンのエグゼクティブ パートナー、小西一有氏は日本の経営者やCIOの意識の遅れに苦言を呈する。
「日本の経営者は相手を負かすための筋書きが描けない」
こう話すのはガートナー ジャパンのエグゼクティブ パートナー、小西一有氏だ。日本の経営者について「戦略とスローガンを間違えている」と指摘する同氏に、日本の経営者の問題点と今後取り組むべき事柄について聞いた。
「商品やサービスなどの優位性をアピールして顧客に買ってもらうのが戦略だが、日本の経営者の多くは社員に向けてただ“頑張れ”というスローガンばかりを投げ掛けている」(同氏)
「頑張れ」の論理を振りかざし、コスト削減、売り上げアップ、顧客満足度の向上など、すべてを万遍なく実現するよう強いるケースが多いのも、戦略なき経営者の典型的な姿だという。注力する事業の「選択と集中ができない」というわけだ。
2月、東芝は次世代DVDの規格争いで、ソニーの「ブルーレイ・ディスク」に敗北したことを認める格好で、HD DVDの生産からの撤退を表明した。これについて小西氏は「東芝は投資の考え方をよく理解していたといえる。撤退を発表した日の東芝の株価は上がった。市場が評価している証拠だ」と話す。
パイオニアがプラズマパネルの自社生産から撤退、日本ビクターが家庭向け薄型テレビの国内生産、販売から撤退するなど、最近になり急に、事業の選択と集中が企業経営のキーワードになり始めた。逆にいえば、多くの日本企業でこれまで、採算性を無視した経営を続けていたとも指摘できる。
なぜ日本の経営者は選択と集中ができないのか。「農耕民族の悪い癖が出ている」と小西氏は話す。「狩猟民族出身」の欧米人が経営する企業とは考え方が本質的に異なっているという。
「狩猟の場合、獲物に向けて矢を放つ者、とどめを刺す者、おとり役など、役割分担が明確だ。責任の所在がはっきりしている。文字通り、“戦略”をしっかり立てなくては命の危険もある。一方で、農業は“みんな”でやるため、責任があいまいになる傾向がある」(小西氏)
民族発展のいきさつから、欧米の経営者は戦略の大切さを身にしみて分かっているのに対して、日本企業の経営者は「よきに計らえ」というように、あいまいな横並び意識から抜け出せない甘さがあるという。
「戦いの末、だれかが姿を消すという感覚が日本の経営者にはない」(小西氏)
では、日本の経営者は何をすればいいのか。何よりも「社内の状況を把握した上でビジョンを打ち出すことが大切だ」(同氏)。だが、組織が大きくなればなるほど、細部を把握しづらくなるのは自明のこと。そこでポイントとして浮上してくるのが「状況の可視化である」と同氏は指摘する。
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