C社の場合も、私的利用を禁ずる手はいくらでもある。例えば、社外への送信は登録アドレスに限定するか、さもなくばccを部長宛に送信することで許されるという規制を設けた企業もある。実はこの場合は規制によって職場が息詰まるということで極めて不評だが、企業によってはメールの私的利用を規制すると発想が萎縮するとして、むしろ自由奔放にすることで創造的発想が期待できると、一切規制をしていないケースもある。
A社・C社共にあれこれ迷っているよりは、前に進めば良いではないか。
しかし、情報漏えいにしても私的利用にしても、小手先の規制ではモグラ叩きと同じである。従業員の質、企業の体質が問われるテーマである。例えば、上の例で勤務時間中にPC麻雀に興じていたという役員がいるような企業は、本質から腐っている。そんな企業では、どんな手を打っても、私的利用も情報漏えいも少しもなくならないだろうし、そもそも手を打とうとする才覚さえないだろう。「そんな大げさな」と思われる読者もいるだろうが、会社の退廃はそうした「PCの利用レベル」から始まるのだ。また、こうした腐り具合というのは、たまたまPCが入っているから、そうした形で顕在化されただけで、社内にPCが1台もなければ、別の形で腐りぐあいを見事に象徴する現象が出てくる。
企業体質を問うならば、CSRとコンプライアンス(単なる法令遵守ではなく広義の意味で)とを、企業風土として定着させなければならない。そのためには、トップを始めとする経営陣から従業員にいたるまでCSRとコンプライアンスが身に染み付き、力を入れなくても自然にふるまいに出てくるようになるまで、研修やOJT、あるいはあらゆる場を使って叩き込まなければならない。その結果、枯れ尾花に怯える必要もなくなる。
その上で始めて、いろいろな規制が生きてくる。そういう基本的なところを手付かずで規制をかけても効果はなく、モグラ叩きになるだけである。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授