「どうして彼はわたしの考えを分かってくれないのだろうか」――。他人と仕事をする上で、誰もが一度は経験することである。これは決して相手に問題があるのではなく、あなたの勝手な思い込みで人物像をつくり上げているからだ。
仕事を進めていく中で、「あの上司とは話が合わない」「同じことを言っても、伝わる部下と伝わらない部下がいる」「そもそも、あの人とは性格が合わない」などと思ったことはないだろうか。
同じ職場でいつも仕事し、多少なりともその人のことは分かっているつもりでいても、少しのきっかけで仕事がうまくいかなかったり、あるいは人間関係がこじれる場合がある。これは往々にして、見えている部分(健在意識)ではなく、見えていない部分(潜在意識)が引き金となっている。意見が食い違うという現象も、その原因をひも解いていくと、「見えていない部分」をお互いに理解していないからというところに行きつく。
その「見えていない部分」の代表例として、「価値観」が挙げられる。価値観とは、潜在意識にある「何を大切に感じるか」という個々の考え方のことである。ビジネスにおいて、個々の社員の価値観を優先することはなくとも、どのようなことを大切にしているのかを知ることは、意見の食い違いをなくすためのきっかけになる。
「価値観を知る」という視点で見ると、ビジネスを成功させるために「何をするか」というよりも「誰とするか」ということを重要視する、と考えるリーダーの方と話をすることが増えてきた。『ビジョナリーカンパニー』の著者であるジェームズ・C・コリンズ氏は、フォーチュン500の企業から偉大な企業(飛躍的成長をし、かつ継続的に伸びている企業)11社の共通項を、「最初に人を選び、その後に目標を選ぶ」ことだと述べている。つまり、目的地を決めるよりも、誰と一緒にバスに乗るのか、そして一緒に乗る「適材な人材」とは、専門知識、学歴、業務経験より、性格と基礎的な能力によって決まると言っている。
メンバーをよく観察し、メンバーの価値観をよく知ることこそ、あなたの組織で高いパフォーマンスを出し続けるメンバーになれるかどうかの鍵なのだ。
メンバーの価値観を知るためには、メンバーに聞いてみればいい。しかし「あなたの価値観は何?」と質問しても、すぐに答えられる人と答えられない人がいる。わたしたちがクライアント企業の組織の一体感を作るために使っているツールがある。それが、以下の12の価値観リストとその定義だ。
承認:同僚・上司・部下・顧客から認められること
名誉:成果について周囲から高い評価を得ること
成長:自分の人格・人間性を高めること/スキルアップすること
信頼:同僚・上司・部下・顧客から頼りにされること
達成:仕事をうまくやり遂げたという達成感
金銭:仕事で得られる報酬
自由:仕事のやり方・進め方を自分で決める自由
安全:現在の状態(地位・収入・人間関係)が確保される
貢献:組織(同僚・上司・部下)や顧客の役に立っているという実感
家族:家族と一緒に過ごす時間とその充足感
責任:自分の業務・成果について任務や責務を負うこと
独立:自分の手で何かを成し遂げているという感覚
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授