新興国が競争力を高めている中、日本のIT産業を育てるには産官学の連携による強いイノベーションが必要となる。企業にとってイノベーションは事業継続のために日夜取り組むべきことだが、大学や政府はそうした意識が薄く、大きな隔たりが生まれているという。
グローバル規模でのIT産業の発展によって、市場はより高度なITスキルを求めてきている。企業や大学にとっては、そうしたスキルを持つ人材をどのように育成、確保するかが大きな課題となる。
日本では産学連携によるIT人材育成が叫ばれているが、乗り越えるべき多くの問題があるのも事実だ。
日本IBMは6月3日、企業の経営層や大学関係者などを対象としたセミナー「IBM IT人材育成フォーラム」を開催した。フォーラムの中で、同社最高顧問の北城恪太郎氏は「グローバル社会におけるIT人材の育成」と題した講演を行い、人材や高度スキル不足などによる日本のIT産業に強い危機感を表した。
「企業におけるICT(情報通信技術)人材は全体で50万人不足しており、中でも高度ICTの人材不足は35万人に上る」――北城氏は総務省の調査データに基づきこう述べた。高度ICT人材とは、マネジメントスキルおよび技術スキルが中級以上かつ少なくとも片方のスキルが上級の人材を指す。具体的には、CIO(最高情報責任者)、CTO(最高技術責任者)、プロジェクトマネジャー(PM)、経営のためのシステム設計者などが該当する。北城氏は、「高度なプログラミング技術者などについては、オフショア開発で海外リソースを活用できるが、ITに精通したマネジメント層はわたしたちの手で育てていかなければならない」と強調した。
日本が必要とする高度ICT人材とは何か。ベースとなるIT技術や業務スキルに加えて、社会人として必要な基礎学力、倫理観、社会規範性などを兼ね備えた人材だと北城氏は説明し、「ほとんどの企業では、熱意、行動力、コミュニケーション力、課題発見力といった基本的な能力を特に重視している」と企業が求める人物像を示した。
しかしながら、「企業が求めるIT人材と学校教育のギャップは大きい」と北城氏は指摘する。モデリング技術やプロジェクト管理、設計技法などのITスキルを企業は求めているが、大学をはじめとする教育現場では、コンピュータサイエンスの基礎理論やプログラミングが中心となっている。
「情報系の大学を卒業していても、ITベンダーなど高度な技術が必要とされる企業の業務レベルには到底達しない。ITの基礎教育も必要だが、さらに高度な専門スキルを持った人材を育てて欲しい」(北城氏)
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明治学院大学 経済学部准教授