日本人のものづくりに対する情熱を集積した手作りのプログラムが、陳腐化したという理由だけでいとも簡単に捨ててしまってよいのだろうか。本当に業務に適さなくなってしまったのだろうか。システムの本質をもう一度考えてみたい。
もうかるための仕組みやシステムを作るためには、エンドユーザーは現状の考え方を切り替え、システム部門も業務のとらえ方を改善しないとだめである。例えば、背中がかゆいといったとき、現在のシステム化の考え方だと「背中かき機」が欲しいという要求になる。リモコン操作でアームがかゆいところをかいてくれる、そういう仕組みだ。しかし、現実に欲しいものは「孫の手」である。いつでもどこでも簡単に自分の感覚でかける、そんな孫の手が求められる。この孫の手はシステムではなく、業務ルールの改善であったり、組織体制の見直しだったりする。
背中かき機のように業務や組織が議論されないままのシステムは、業務を複雑化するだけで組織変更の際の足かせになる。そうした企業は成長するにつれて、動きが遅くなっていく。特に大企業では指示命令系統が複雑化し、調整というはん雑な作業を繰り返さなければならない。
過去の延長線上で現状のシステムの改修を繰り返しても、現場業務との乖離は広がるばかりであるほか、これまでの改修スピードでは遅すぎて対応がまったく追いつかなくなる。新しい事業戦略やビジネスモデルに合わせてシステム構築を繰り返しても、開発手法を変えない限り陳腐化のスピードは止められない。
では、どのような開発手法に変えていけばいいのか。
改めてわたしたちが長年かけて築いてきたシステムを見直してみよう。業務は本当に変わったのか。現場で今のシステムは使えないのか。何が変化しているのか。ビジネススピードとは何なのか……。
ITコンサルタントや流行のキーワードに惑わされず、自分の目で現場の業務実態を見て、本当の業務の流れを描いてみよう。きっと何かが見えてくるはずだ。既存のアプリケーションシステムを最大限に生かす解決策が必ず見えてくる。システムが肥大化した会社の組織事情を取り除き必要な機能だけを残し、変化が少ない機能と変化が多い機能を疎結合化する。アプリケーションシステムをレゴのブロックのように分解して考えてみることだ。
しかし、目の前の企業課題を解決する方が先決であり、実際には時間をかけて企業全体のシステム構造を改善していくことが難しいというのが現実である。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授