インターネットがメディアとして影響力を持つようになり、テレビをはじめとする従来のマスメディアは苦戦を強いられている。今こそ報道のあり方を見つめ直すとともに、これまで培った経験を武器に変えるべきだ。
これだけインターネットメディア*1が増えてくると、相対的にマスメディア*2の力が弱まるのは仕方ないことです。少し前から、マスコミの方々から、インターネットメディアに比べて自分たちは何で勝負すべきなのだろうと質問されることが多くなってきました。そこで、今回は、変わりゆくマスメディアとその将来を考えてみたいと思います。
わたしたちがインターネットをメディアとして意識し始めたのはいつのころからでしょうか?
1994年夏の盛りのころでした。当時米国で暮らしていたわたしは、近所のバーベキューパーティーに参加した際に米Yahoo!の創業者、ジェリー・ヤンと出会いました。まだ起業したての彼は、興奮を隠さず、翌日に予定されているスピーチにわたしを誘ってくれました。100人余りの前でヤン氏は、Yahoo!がディレクトリーサービスを始めたこと、これからは広告収入でもうけていくのだと語りました。わたしも含めて、聴衆のほとんどが腑に落ちない顔で拍手をしていたのを覚えています。
しかし、インターネットのユーザー数が増えるにつれ、わたしたちはインターネットサイトがメディアであることを確信するに至ります。今では、インターネットサイトは、4大マス媒体と同様に広告収入がビジネスを支えているメディアであると疑う余地はありません。
一方で最近、マス媒体の代表といえるテレビを見ると残念ながら落胆を隠せません。100年に1度の不況によって企業の広告宣伝費が大幅削減されるほか、たとえ捻出できたとしてもインターネットに広告予算を奪われている現状であるため、制作費は大幅カット、バラエティー番組ばかりが目に付きます。番組制作の方に話を伺うと、それでもやはりバラエティーを放送すれば視聴率が取れるのだそうです。コンテンツの二次利用である再放送が多く、土曜の午後は番宣と呼ばれる番組のプレビューでほとんどの時間を埋めています。
そして、広告主。コマーシャル(CM)の変化にお気付きの方も多いでしょう。かつては、自主規制していた業界のコマーシャルが目立ちます。わたしの知るテレビ番組などは1月に入ってスポンサーの半数が降りたということですから、規制のハードルを下げざるを得ないのでしょう。しかし、番組のコンテンツとスポンサーの業態がフィットしていないと番組までつまらなく思えます。テレビが誕生して50年、テレビはスポンサー企業の商品や企業ブランディングに貢献しただけでなく、選りすぐったスポンサーを選択することで、テレビという媒体も一緒にブランディングしていたのだと思います。その努力に敬意の念を払うとともに、負のスパイラルに入っているような現状が寂しくてたまりません。
明らかにテレビが置かれている環境は変わっているのです。時代に合わせて消費者行動が変わり、テレビの見方や使い方も変わる。インターネットが発する情報の質との相対的な比較により変わらざるを得ないのです。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授