運営方法の大枠を決めるのと並行して、タスクチームのキックオフ会議を招集しよう
タスクチームは「組織を代表する人」に声を掛けることが多いため、メンバーの多くは多忙だ。こうしたメンバーに確実にタスクチームに参加してもらうには、できるだけ時間に余裕を持ってキックオフ会議を招集したい。
招集の知らせは電子メールを使うことが多い。招集する電子メールには、タスク成立の過程とタスクの目的、メンバーを選出したいきさつ、キックオフまでに各メンバーで準備することを簡潔に明記する。電子メールの全文がPCの画面1枚に収まるようにしたい。
メンバーのキーマンにはあらかじめ根回しをしておくことも必要になる。事前に直接会い、タスクのいきさつや目的、お願いしたいことを説明しておく。ちなみに、根回しは日本人だけの専売特許ではない。わたしの勤務先は外資系で同僚には欧米人も多いが、彼らもきちんと根回しをしている。こうした努力が、会議を円滑に進めることにつながる。この段階の手間を惜しんではいけない。
キックオフ会議が近づいてきたら、会議で使用する資料を用意する。
必ずしも詳細な資料を用意する必要はない。下記の事項を網羅していれば、あとは概略を記述しておけば十分だ。資料は「仮説」であると割り切り、議論を通じて微調整していく。先に挙げた「製品事業部A/B/Cの3部門が協働して、製品開発プロジェクトを年内に3件立ち上げる」を例に、どのような資料が必要か書いてみたので参考いただきたい。
タスクチームが生まれたいきさつと解決すべき問題
「市場シェアが低下し続けている」という課題に対して、「個々の製品単体の売り込みばかりをやっており、顧客の課題を考え、全社一体でその課題を解決するような価値の訴求ができていない」ことが問題点として挙がり、経営陣からタスクチームで解決することが提案された
タスクチームの目的(仮説)
シェア回復のために、全社最適による顧客視点の価値訴求を企画・実施する
タスクチームの目標(仮説)
製品事業部A/B/Cの3部門が協働して、製品開発プロジェクトを年内に3件立ち上げる
大枠のスケジュール
(前述の詳細スケジュールを紹介する)
メンバーの役割分担
(前回「2-3 タスクメンバーの選定」で決定したメンバー一覧と、その際に想定していた各メンバーに期待している役割を紹介する)
タスクチームの運営方法
「2-5 ロジスティクスの設定」で決定したロジスティクスを紹介する
バックアップ資料
(問題点や仮説を客観的に裏付ける情報があれば、別途用意しておく)
早い段階から準備するにこしたことはないが、周囲の状況や方針が頻繁に変わることも想定される。必ず直前に資料を見直し、最新の状況に合ったものに仕上げる必要がある。タスクの準備が周到に進んでおり、かつキックオフ会議の直前に時間を確保できるのであれば、キックオフ直前に作成するのもいいだろう。
こうした段取りに時間と手間を十分にかけて、タスクチームの立ち上げに万全を期すようにしたい。次回は、実際にタスクチームを運営する際に、問題意識を共有し、目的を定め、現状を把握するための取り組み方を紹介していく。
(注)本書に掲載された内容は永井孝尚個人の見解であり、必ずしも勤務先であるIBMの立場、戦略、意見を代表するものではありません。
日本アイ・ビー・エム株式会社ソフトウェア事業部にて、マーケティングマネジャーとして、ソフトウェア事業戦略を担当。グローバル企業の中で、グローバル統合の強みを生かしつつ、いかに日本に根ざしたマーケティング戦略を立てて実践するのか、格闘する日々を送っている。アイティメディア「オルタナティブ・ブログ」の「永井孝尚のMM21」で、企業におけるマーケティング、ビジネススキル、グローバルコミュニケーション、及び個人のライフワークについて執筆中。著書に「戦略プロフェッショナルの心得」がある。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授