タスクチームを進行するための屋台骨が完成したら、次は現状の把握だ。だが、問題、目的、目標を定義したすぐ後に、「問題の根本的な原因は何か」「目標達成のためにどうアクションするか」といった議論を進めてはいけない。
問題や目標を定義をすることと、現状を十分に把握することは同義ではない。議論を進めたい気持ちは分かるが、現状把握や問題分析をしていない状態で目標達成のアクションを決めようとすると、タスクと原因を短絡的に結び付けやすい。間違った現状分析は、タスクの進行を難航させる。
問題を定義した後にすべきこと、それはその問題の現状を具体的な数字で把握することだ。
例として、ある商品が売れなくなった場合を考えてみよう。この場合、過去から現在までの売り上げ推移や販売経路の分析、案件の締結までに要した時間の経年推移、地域別分析などの数字を分析し、異常値から問題の原因を推察することが多い。だが、こうした異常値は議論だけでは決して浮かび上がってこない。数字を分析し、裏付けを取って初めて把握できるものだ。
数字に関する分析をしないまま、議論だけで問題の原因分析を進めてしまうと、議論が宙に浮いてしまう。タスクメンバーごとに現状の認識が異なり、意見のすれ違いが起きるからだ。地に足が着いていない議論は、膨大な時間をかけても収束できず、結果として議論を先に進めることはできない。
こうした事態を回避するためには、事務局を駆使しよう。事務局のスタッフがあらかじめ現状を分析し、タスクチームにその概要を紹介。タスクメンバーから意見を求めた上で、議論につなげる。現状分析の柱を据えておくことで、議論の骨格が完成する。
現状分析は、現実に基づいてさまざまな資料と分析手法を駆使して実施しなければならない。つまり、ある水準以上の分析スキルが必須だ。これができるメンバーに現状分析の作成を依頼することが望ましい。現状分析が的外れだと、メンバーがそれを受け入れず、議論も発散してしまう。カギとなるメンバー数人に現状分析のドラフトを見せて、意見を求めておくようにしたい。
複数人の会議では議論の方向性がねじれそうな場合は、一対一の議論の場を設けよう。ここで吸い上げた意見を基に現状分析を修正し、会議で提示すれば、生産的な議論ができるようになる。
また、現状分析を議論に任せて発散させる方法もある。だがこの場合、1〜2時間程度の議論では結論が出ない。意識的に時間をたくさんかけることが必要だ。場合によっては2〜3日の合宿を組まなければいけない。
次回は、問題の原因を究明する手法やその考え方を伝える。
(注)本書に掲載された内容は永井孝尚個人の見解であり、必ずしも勤務先であるIBMの立場、戦略、意見を代表するものではありません。
日本アイ・ビー・エム株式会社ソフトウェア事業部にて、マーケティングマネジャーとして、ソフトウェア事業戦略を担当。グローバル企業の中で、グローバル統合の強みを生かしつつ、いかに日本に根ざしたマーケティング戦略を立てて実践するのか、格闘する日々を送っている。アイティメディア「オルタナティブ・ブログ」の「永井孝尚のMM21」で、企業におけるマーケティング、ビジネススキル、グローバルコミュニケーション、及び個人のライフワークについて執筆中。著書に「戦略プロフェッショナルの心得」がある。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授