最終回となる今回は、Webマーケティングの今後のあるべき姿といえるWebセントリックについて述べたいと思います。Webセントリックマーケティングとは、まったく新しい概念ということではなく、1990年代のインターネット商用化の後、散々議論されてきたことと同様の概念です。ただ、第2回のコラムで書いたように、当時は、市場規模が小さかったこと、それ故、企業が利益や十分なリターンを得られなかったこと、インフラストラクチャがまだぜい弱でユーザーの利便性が低かったこと、スケールメリットがなく開発コストが高かったことなどの理由により、この新しいマーケティング手法には、ごく一部の企業しか興味を持っていませんでした。
その後、市場は十分に熟し、現在では感度の高いマーケティング担当者はわれ先にとこの手法を取り入れるためのプランを練っているところです。マーケティングの支援会社であるWeb広告代理業、Webマネジメント、SEOなどのパートナー企業も、これを行う体制作りに必死のようです。
Webセントリックマーケティングを一言で言い表せば、「デジタル社会において顧客(エンドユーザー)と企業の関係を強化するマーケティング」で、まさに、概念的には、インターネット初期に出現したOne-to-oneマーケティングと類似したものです。今であれば、エンゲージメントマーケティング(ファン化によるマーケティング)の概念の方がしっくりくるかもしれません。これらの概念は、技術の進歩やユーザー行動の変化により、具現化がより明確になってきたのです。その結果、顧客のロイヤリティーを高めファン化するためにも、すべてのマーケティング活動の中核にWebを位置付け、数値という指標を持ち、中長期的に投資対効果を高める手法が確立してきました。
かつてマーケィング効果が上がるメディアはマスメディアだけでした。大多数に認知効果を高めるにはマスメディアを使うことが最も適切でした。しかし、マスメディアで測れる指標といえば、視聴率や購買人数など間接的なものしかありません。さらに顧客の嗜好は多様化、購買行動は変貌し、今や多数にリーチするというメディアのマーケティング効果は逓減するばかりです。
この市場の変化と時を同じくして登場したのがインターネットです。双方向性があり、ターゲットユーザーにリーチでき、マスメディアのように認知(=宣伝)だけでなく、企業活動全般(商品開発、宣伝、営業、販売、サポート)を押さえられるメディアとして期待されました。インターネットは、市場が成長するにつれ、時間(テレビの30秒CMなど)や空間(新聞の15段など)にとらわれない強力な自社メディアとして認識されています。
加えて、インターネットには、ソーシャルメディアというもう一つの側面があります。顧客が企業活動(商品開発からサポートまで)に参加している今、このソーシャルメディアとしての側面を無視することはできません。
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