図1は、SOAでいうところのESB(Enterprise Service Bus)と業務プロセス、既存システムとの関係を図示したものです。すべての業務プロセスが、個別の情報システムの機能を直接利用しているのではなく、ESBを介して機能別のシステムを横断し、業務プロセスベースにシステム処理が流れていきます。読者の皆さまが情報システムの構築における何らかのソリューションを探していらっしゃる場合、その選択肢は意外に多いことにお気付きになるかと思います。
SOAといえば技術面での話題が多く、またアーキテクチャの特徴から、業務面ではM&A(合併と買収)時のシステム統合に最適だとか、アプリケーション開発のコストが安価に済むという面が持てはやされがちです。しかしそれは、SOA環境を適切に適用・構築できた場合に生まれるメリットです。
SOA環境を適切に適用・構築するためには、まず業務プロセスを理解し、自社のビジネスを業務プロセスベースで分析することが必須となります。それをせずに技術面やアーキテクチャの特徴から生まれるメリットを声高に論じても、何も生まれません。
経営とITを融合させるための第一歩は、ビジネスの将来を考え、自社の業務プロセスを理解することから生まれます。組織を横断する業務プロセスを整備した企業こそが、顧客に対して価値を生み出していくのであり、サイロ構造の組織ではこれは実現できません。サイロ構造を映し出したかのような既存のシステムでは、業務プロセスを通じて価値を発揮できないからです。
経営者やシステムの利用者は、すでにこのことに気付き、システムの改修を迫ってきます。そのことに気付いたCIOやIT部門は「今の情報システムの機能をゼロから作り直すことができれば……」という思いに駆られるのです。データを中心に業務プロセスを見直すこと以外に、情報システムを立て直す王道は存在しないのです。
SOAは、IT関連の諸問題に対する万能な特効薬ではありません。むしろ、SOAを適用したシステム開発は、大変険しい道のりを歩んでいくことと同義です。冒頭で提起した「情報システムをゼロから作り直したい」という気持ちになりにくくなる可能性が高いアーキテクチャではあります。
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2006年にガートナー ジャパン入社。それ以前は企業のシステム企画部門で情報システム戦略の企画立案、予算策定、プロジェクト・マネジメントを担当。大規模なシステム投資に端を発する業務改革プロジェクトにマネジメントの一員として参画した。ガートナーでは、CIO向けのメンバーシップ事業「エグゼクティブ・プログラム(EXP)」の日本の責任者を務める。日本のCIOは、経験値だけでなく、最新のグローバル標準を研究した上で市場競争力を高めるべきとの持論を持つ。
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明治学院大学 経済学部准教授