景気が悪いからと下を向いてばかりでは駄目だ。今だからこそ経営を強化する絶好の機会なのだ。キヤノン電子やニトリの例を見てみよう。
この不況の中で多くの企業が苦しんでいる一方で、好業績の元気な企業もある。好業績企業の経営手法は、大きく新製品開発と企業体質の強化に分類できる。しかし、その背後にある経営哲学を知らずに単純に経営手法をまねても、企業にとってマイナスになることを忘れてはならない。
前回は、新製品開発を取り上げた。今回は、企業体質の強化について好業績企業の例を分析し、その背後にある経営哲学を探る。
キヤノン電子は、高収益企業として有名である。売り上げ規模では6期連続増収、最高売り上げは4期連続更新で、収益面では営業増益を2007年まで9期連続達成した。売上高が1999年と2007年の比較で1.4倍に対し、経常利益率が9倍以上になったのが、酒巻社長の自慢だ。2009年決算は経済環境の悪化で売り上げ減少したが、当期純利益は確保した。
その要因は「積極的な経費削減」と「抜本的な生産性向上」だ。そう言ってしまえば実に平凡な対策だが、背後には深い経営哲学があり、それを具現化することによって達成したものである。
具体的には、環境経営のノウハウを実践した。以下に、「環境対策をテコに、とことんムダを省いて、利益の出る仕組み」を作ったという経営手法の概要を紹介しよう(『「会社のアカスリ」で利益10倍! 本当は儲かる環境経営』酒巻久著 朝日新書より)。
標語として「急ごう、さもないと会社も地球も滅びてしまう」、具体的目標として「TSS 1/2」(Time & Space Saving)を掲げる。時間、生産スペース、水・ガス・電気使用量、人・物の移動距離、CO2排出量などを、すべてこれまでの半分に減らそうという意味だ。それをオフィスから工場、設計、調達、物流、社員の意識に到るまで、徹底して取り組む。
具体策を個々に見ていくと、そのほとんどがどの企業でも取り組んでいるありふれた内容である。ただ決定的に違うところは、(1)「環境」を根拠としていることにより、全社員のよりどころとなっていること、(2)トップが本気で取り組んでいること、(3)平凡な諸策の中にも特異な内容があり、その例として、(1)オフィスでゴミの分別をする、(2)工場で「間締め」と称して空間を詰める。例として椅子排除、会議は座らずに立つ、設備装置を小型に買い直すなど、(3)設計で環境悪影響物質を排除、使う資源の最小化を狙う、(4)物流では、そもそもなぜ人や物は移動する必要があるのかから問う、(5)社員意識改革として、影響力のある管理部門の有望社員から口説く、マニュアルでなく直接対話を、というところだ。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授