不況期だからこそできることがある生き残れない経営(2/3 ページ)

» 2009年09月18日 07時45分 公開
[増岡直二郎(nao IT研究所),ITmedia]

継続的な値下げ宣言

 次の例は、家具製造販売のニトリである。同業の大塚家具やイケアが業績低迷しているのに、同社は2009年2月期で約340億円の経常利益を計上し、なんと22期連続の経常最高益を達成した。損益分岐点比率を2005年から4年間で76%から72%を切るところまで下げてきた。継続的な「値下げ宣言」をしたニトリは、低価格製品でも稼げるビジネスモデルにあくなき挑戦をし、値下げ攻勢を続ける。

 まず、商品の絞り込みによる在庫縮減だ。2005年2月期に1万種類以上あった商品を、余計なサイズや不人気なデザインなどの商品を減らし、売れ筋商品に集約し、約20%削減した。その結果、売れ筋商品の欠品が減ってむしろ売り上げ増になった。棚卸資産回転日数も、4年前から7日改善した。

 次に、売り場効率の向上だ。教育を充実してより広い売り場を担当できるようにした結果、従業員1人当たり売り場面積は、2008年で41.5坪と、2005年から約3坪も拡大した。

 海外への生産移管による、コスト削減も徹底した。すでに1994年にインドネシア、2003年にベトナムに現地法人(製造拠点)を設置して製造しているが、さらにソファ、ベッドなど高単価製品を人件費の安いインドネイア、ベトナムなど海外の自社工場へ移管した。2007年には、原材料調達も見据えてインドへ拠点を開設している。 不良品比率も1%未満で、品質の安定した商品を提供している(以上は、「第37期有価証券報告書」、および日本経済新聞2009年3月5日付より)。

取引先の人材までも育てる

 不況期を好機に多方面で人材育成に力を入れ、経営体質の強化を狙う企業の例についても見てみよう。解体機専門メーカーの坂戸工作所は、経営方針の1つに「品質は責任感から生まれ、責任感は人格から生まれる」を掲げるように、社員はコストではなく会社を成長させる資産であるととらえて、人材教育に余念がない。「不況は技術力を高めるチャンス」「永遠に続く不況はない。今は好況時に向けた準備期間」という社長方針で不況に臨む。

 過去の不況でも人員削減せず、海外進出や部品調達を見直すなどの手を打って、不況を乗り切ってきたという。溶接、切断という基礎技術、作図など多方面にわたる教育として、1、2時間、週2回勉強会を持っている。2009年5月から、土、日すべてを研修に当てているという。

 マシニングセンター、NCフライス、3次元測定器、各種検査設備メーカーの三信精機は、「ものづくりはひとづくり」をモットーに、取引先の後継者教育に取り組む。「不況は人を育てる好機」「不況を肌で感じて学んで欲しい」と、取引先経営者の後継者教育に力を入れる。昨秋始めた「新規受注プロジェクト」に2人の2代目を参加させた。取引先の後継者養成は、自社にプラスになるというほかに、日本のものづくりを維持して行くための支援になるという高邁な目的もある。

 オイルレスベアリングの製造販売から出発し、各種機械部品の製造販売を業とするポーライトは、好況期には時間がなくて手がまわらなかった顧客企業と交流を図っている。企業知名度が低いこともあり、受注が減って時間的余裕ができた今、顧客を招いて見学会を持ち、企業を理解してもらおうとしている(以上は、日本経済新聞2009年1月14日付および5月1日付)。

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