Windows 7の企業向けリリースが開始される一方、多くの企業でクライアントとして使われているWindowsXPのサポート終了期限が近付いている。「ポストXP」のクライアントは、どのようなOSが望ましいのだろうか。
アイティメディアは9月29日、経営層に向けたセミナー「第9回 ITmedia エグゼクティブ フォーラム」を開催した。「ポストXP時代のクライアント戦略を考える」と題した基調講演では、アイ・ティ・アール(ITR)の生熊清司シニアアナリストが今後の企業クライアントの姿について、興味深い考察を行った。
企業で使われているクライアントOSの多くは、いまだWindowsXPだ。多くの企業がWindows Vistaへの移行を見送り、そのまま使い続けている。ITRが企業クライアントOSの調査を行ったところ、2008年10月時点で8割以上がWindowsXPだったという。グローバルでも米Forrester Researchが同年6月に行った同様の調査で、ほぼ似たような結果が出ている。いずれもの調査でも、Windows Vistaを使っているのは1割に満たない。
しかし、Windows Vistaに次ぐ新OS、Windows7が企業向けにリリースされた今、いよいよ「ポストXP」を考えねばならぬ段階になってきた。
「マイクロソフトは2009年9月14日にWindowsXPのメインストリームサポートを終了しており、その後は延長サポートが提供されるが、これも2014年4月18日までで終了する予定だ」(生熊氏)
クライアントを更新する際には、既存アプリケーションが新たな環境に対応できず、アプリケーションの改修が必要になる場合があり、また改修せず使えるとしても動作検証には時間がかかる。こうしたことを考えると、これから先に残された時間は少ない。
企業で使うクライアントはアプリケーションの互換性が重要な問題となる。クライアント/サーバ(C/S)型アプリケーションはもちろん、近年になって増加してきたWebアプリケーションにおいても、その互換性が問題になるケースは少なくない。実際、同じWindows上でも、Internet Explorer(IE)のバージョンの違いによってWebアプリケーションの表示や挙動が異なってしまう場合がある。
先に挙げたITRとForresterの調査でも、そのことが示唆されている。主として使っているブラウザとして上げられた最多のものは、2つ前のバージョンであるIE6。IE7と回答した数は2番目という結果だった。
また、いまだに多くの企業で使われているC/S型アプリケーションでは、WindowsXPからWindows7へ移行するとしても、互換性が気になるところだ。これについては、Windowsカーネルの世代が互換性に大きく関係すると生熊氏は考えている。
「Windowsのカーネルとして、Windows7はWindows Vistaと同じく“Longhorn”カーネルを使っており、WindowsXPの1つ後の世代に相当する。Windows7は古いアプリケーションを動作させる互換モードも備えているが、それでも対応できないアプリケーションも存在することだろう。個人的な考えとしては、異なるカーネル間での移行では問題が生じやすい。Windows7の次のバージョンでは、Longhornでなく開発中の新カーネルになることだろう。もし仮にWindowsXPから、Windows7の次のバージョンのWindowsへ移行するとなれば、カーネルのバージョンを2つもまたぐことになり、互換性についてはより多くの問題が生じるのではないだろうか」(生熊氏)
一方、どちらにしてもアプリケーションの更新が必要になるのであれば、いっそのことほかのOSとブラウザの組み合わせに変更することも考えられる。絶対数の上では少ないが、LinuxやMac OS XなどもクライアントOSとして使われている例がすでにある。また、シンクライアントなど非PC端末の採用例も増えてきた。加えてWebアプリケーションも増加しており、Windows以外への移行も視野に入りつつあるというのが現状である。
WindowsXPがリリースされたのは2001年。この8年間で、企業クライアントを取り巻く環境は大きく変化してきた。いや、実際にはもっと以前から、IT環境は変化を続けている。
「クライアント1台あたりの単価は下がったが、モバイルクライアントの導入などによってむしろ台数は増えている。サーバは仮想化が進んで台数を減らせるようになったものの、エンドユーザーが使うクライアントは不可欠な存在である。当面、この状況は変わらないだろう」(生熊氏)
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