「マーチャンダイジングと顧客の情報をデータウェアハウスで融合したほか、だれが、いつ、何を見て、どんな判断をすればいいのか、定型レポートも整理した」と保坂氏。マニュアルもロールごとに全く違うものを用意するという念の入れようだ。
また、データウェアハウスによって初めて可能となったクロス分析機能は、顧客や商品を10等分して優良顧客や売れ筋商品を把握するという単純な「デシル分析」から、ターゲット顧客に対してきめ細かい施策が打てるよう同百貨店のマーケティングを進化させている。
例えば、「買上来店日数」を軸に得意客を分析する場合はこうだ。前々期、そのデシル分析の結果がランク7だったが、前期にランク1の優良顧客へと一気に上がったグループを分析したところ、レストラン街の利用が多かったことが分かった。となれば、現在ランク7のターゲット顧客に対してレストランをプロモーションすれば、買上来店日数が高まるという仮説が立つ。
「新しい情報システムによって社内に“共通言語”が生まれた。顧客に対する理解を深め、顧客満足度を高めるための仮説を導きだすことができるようになった」と保坂氏。
情報活用を軸にした業務改革を着実に進めるため、京王百貨店では、営業本部にCRM専任者を新たに置くとともに、各売り場でも入社7〜8年目、年齢にすれば30才前後の53人をCRMリーダーとして任命し、定期的に会議も行っている。これにより、本部が打つマーケティング戦略と各売り場が実施するダイレクトメールの計画などが連動するようになったほか、各売り場のノウハウが全体で共有できるようになったという。
「どのターゲットに、どんなタイミングでダイレクトメールを送ればいいのか? 現場がどんな顧客かを意識するようになったし、やりっ放しではなく、きちんと効果を評価する文化も芽生えてきた。新しい情報系システムが一部稼働し始めてから1年半、フル稼働からはわずか半年だが、意識改革が目に見えるようになってきた」と保坂氏は話す。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授