中国市場においてテレビの販売シェアで国産ブランドに遅れをとっている外資企業。ソニーは地方都市への販売ネットワークを拡張するとともに、独自の戦略で顧客増を狙う。
これは世界で勝つ 強い日本企業のつくり方の特集記事です。
世界を震撼させた未曾有の大不況は深い爪痕を残した。先進国は軒並みマイナス成長が続き、2009年度は日米欧ともに本格的な景気回復には至らないだろう。一方で、中国は8%を超える経済成長を予測している。名目GDP(国内総生産)は来年にも日本を抜いて世界2位になることが確実視されている。
成長とともに競争が激化する中国市場で勝つための条件は何か。ソニーの中国法人、ソニーチャイナの永田晴康社長に聞いた。
ITmedia 中国において競合他社と日々しのぎを削る上で、ソニーはどのような差別化戦略をとっているのでしょうか。
永田 品質や技術力の高さという点で、Sonyというブランドは中国市場に訴求し続けています。幸いなことに一定の富裕層にはプレミアムイメージが定着しています。しかしマーケット全体でいうとニッチな層に過ぎません。
そこで顧客のすそ野を広げるために、PCやデジタルカメラのようなパーソナル製品の購入者に対して、使い方などを教える講習会を行っています。20人規模の講習会を中国各地で毎日7カ所、年間2800回ほど開いています。基本的にマーケティングとは、これから製品を買ってもらう人に対してメッセージを打ち出すことが多いですが、顧客満足度を高めてリピーターになってもらうとともに、周囲の人にも宣伝してもらうには、購入者に対するフォローが効果的です。中国のある市場調査では、商品購入の際に最も影響を与えるのは友人や知人の薦めだというデータが出ています。講習会に参加するのは年間で約5万6000人と中国の全人口から見ればわずかな数ですが、数人に製品の良さを紹介してもらうだけで大きな口コミ効果を生みます。
われわれはポストパーチェスマーケティング(Post Purchase Marketing)と呼んでいます。ポストパーチェスの「P」は、売った後のマーケティングに加えて、プリパーチェス、つまり次の購買を促すという意味を持ちます。講習会のような活動は地道で目立たないのですが、この場を通じて顧客が何に困っているか、何を求めているかをすべて拾い上げられます。テレビCMや雑誌広告でいくらノイズを上げようと、顧客は購入するまで製品の真の良さは分かりません。また購入したいと思うような体験をさせることがすべてなので、製品セミナーなどを積極的に行っているわけです。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授