では、このような環境の下、企業のかじ取りに責任を持つ経営者にはどのような対応が求められるのでしょうか。変化への対応というと、1990年代にも「不確実性時代の戦略思考」*1において、不確実性を4段階に分けて適切な戦略を選択する経営アプローチが提唱されました。「アダプティブ・エンタープライズ」*2の考え方に代表される、センス・アンド・レスポンド型の変化対応力を身に付けるべく、例えば、製造業では情報技術を活用したサプライチェーンマネジメント(SCM)に取組み、リードタイムの短縮や在庫の適正化を実現し、市場(需要)の変化に対応してきました。
そのための仕組み作り(ビジネスプロセスの変革と情報システムの構築)には数年の期間と多大なIT投資を必要とされるのが一般的です。それでも、この取り組みにいち早く着手し、ビジネスプロセスの刷新を実現している企業とそうでない企業では業績に大きな差が生じていることも事実です。それにもかかわらず、今回のような急激な変化には、従来からSCMに取り組み、グローバルで強い競争力を持っている企業であっても、迅速な対応が難しく、大量の在庫を抱え、急激な減産を強いられることになったことは記憶に新しいと思います。
それでは、このような急激な変化が突然起きるビジネス環境において、経営者にはどのような力が求められるでしょうか。そのことについて、多くの経営者や識者は「先見力」を挙げています。
先見力とは先を見通す力です。従来は、過去起こったことを分析し、現状を踏まえて将来を予測するアプローチが一般的でしたが、今後は「現在と未来を見て打ち手を考える」ことが必要になります。ここでいう未来とはビジョンと同義となります。つまり、将来の目指す姿(ビジネスモデルの将来像)を経営者自身が描き、現状を踏まえて目指す姿を実現するための手を打つというアプローチが必要になります(図3)。
目指す姿は仮説であり、事実に基づいた検証が必要です。事実とは、ビジネスの現場で実際に起きていることを指します。現場とは、自社のビジネスにおける顧客接点や社内の業務(商品開発、生産、物流、販売、会計など)、取引先や関係機関などとの接点ですが、その範囲は事業展開しているすべての国や地域に及びます。これら現場で起きている事実を時系列かつ短時間で把握し、その意味するところを分析しなければなりません。この情報の精度と迅速な仮説検証に直結するため、最近では「現場の見える化」、「見せる化」とその分析に注力する企業が増えているのだと考えています。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授