このような時代背景の中、昨年2月から4月にかけて、IBMが世界78カ国、2500人のCIO(最高情報責任者)への対面インタビューを実施し、意識調査・分析レポートとしてまとめた「IBM Global CIO Study 2009」でも、今後3年間でIT部門に最も大きな影響を与える外的要因について、半数以上のCIOが自社の「ビジネスモデルの変化」を挙げており、ビジネスモデルの変化にIT部門が貢献していく必要性を強く意識していることが分かります。
また、企業の競争力向上のために取り組むべきテーマについては、回答者の約8割が「ビジネスインテリジェンスと分析」を挙げ、これが1位となっています(図4)。ビジネスインテリジェンスとは企業内外の事実に基づくデータを組織的かつ系統的に蓄積、分類、検索、分析、加工して、ビジネス上の各種の意思決定に有用な知識や洞察を生み出すという概念や仕組み、活動のこと(出典:ITmedia @IT情報マネジメント用語事典)をいい、情報技術を企業経営に活用する意味で、CIOが果たす役割は非常に大きいと言えます。
ところがCIOの重要性が高まっている経営環境において、日本企業における経営層の一員としてのCIOの設置率は、大企業でも約35%に過ぎず、全世界平均の75%はに遠く及ばない(出典:IBM Global CIO Study 2009)のが現状です。
今後のビジネスモデル変革には、ビジネスインテリジェンス力が経営の必須能力であり、CIOは不可欠の経営機能と言えるでしょう。この機能を果たすには、下記の3点で従前とは異なり難易度が高くなっています。
(1)グローバル経済による事業範囲の広がり(ますます影響を受ける範囲が広がっている)
(2)地球環境保全問題のような新たな要因の追加(さらに影響を受ける要因が増えている)
(3)グローバルマネーの増大、マルチプル経済(将来への期待に基づく評価×レバレッジ活用)による価格変動性の増大(さまざまな市場での価格の振れ幅が大きくなっている)
次回以降は、これらを意識して今後の企業経営で必須となるCIOの役割や、ビジネスインテリジェンスをはじめ不確実な時代における経営のかじ取りに不可欠な最新のテクノロジーについて解説していきます。
加藤陽一(かとう よういち)
日本アイ・ビー・エム(株)グローバルビジネスサービス事業 ビジネスイノベーションサービス パートナー
1984年3月、電気通信大学電気通信学部情報数理工学科卒、同年4月日本IBM入社。金融機関担当営業部門において顧客担当システム・エンジニアとして顧客企業の情報システム企画、構築、運用の技術支援を担当。1995年に日本IBMのコンサルティング サービス部門に異動し、金融機関、製造業、流通業、公益企業の事業戦略、業務改革、IT戦略、IT構造改革のコンサルティング業務に従事。2002年からIBMビジネスコンサルティングサービス 戦略グループ・ITトランスフォーメンションコンサルティングのリーダー。2007年1月、同社戦略グループ IT戦略コンサルティング担当パートナーに就任。現在に至る。
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早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授