サービスプロバイダー業界潮流――激動のM&A時代をくぐり抜けて潮目を読む(1/2 ページ)

過去から現在までコンサルティング業界では統合・合併が頻繁に行われています。今回は、コンサルティングのビジネスモデルの変遷をまとめます。

» 2009年08月04日 07時45分 公開
[椎木茂(IBCS),ITmedia]

 今年4月、べリングポイントがPwCネットワークへの参加を発表し、「プライスウォーターハウスクーパースコンサルタント」という社名が復活したのは記憶に新しいことでしょう。コンサルティング業界では統合や合併が頻繁に行われ、そのたびに社名が変わり、複雑な業界と感じている方も多いと思います。

 前回は、経営とITの関係性と、その仲人としてビジネスバリューを提供するコンサルティングサービスが繁栄するに至るまでを述べました。今回はそのコンサルティングをはじめとしたサービスプロバイダーのビジネスモデルの変遷、およびそれを促す最大の要因であるお客様企業の要求の変化について述べます。

コンサルティングビジネスにおけるビジネスモデルの変遷

 激動の統合や合併の背景を理解するためには、まずビジネスモデルについて語る必要があります。そもそも会計事務所からコンサルティングサービスが派生したのは、公認会計士が監査業務の中で指摘したさまざまな経営課題や業務上の問題に対して、解決や指導を行うサービスが求められたのが始まりでした。故に、取り扱う内容は課題中心であり、経営課題を解決するためのビジネスモデルや業務プロセスなどの改革から、徐々にシステム導入を伴うテーマへと広がっていきました。個々のクライアント企業に対する深い理解と関与が必要だったため、人材は少数精鋭であり、大規模に発展できないという側面もありました。

 営業モデルとしては、コンサルティングファームの株主でもあり実行責任者でもある「パートナー」がクライアント企業への責任者として対峙し、監査業務によって提示される課題を基に経営コンサルティングや業務改革のプロジェクトを受託し、一線のコンサルタントとともにサービスを行うという形態をとっていました。

 このビジネスモデルに大きな潮目が訪れたのは、皆さんもよくご存じのエンロン事件が契機です。2001年にエンロンの巨額な不正経理・不正取引が発覚し、米証券取引委員会が監査法人とコンサルティング部門の分離を求める規則案を作り、米政府は2002年に会計不祥事やコンプライアンスの欠如を防止するためのSOX法を制定しました。

 結果として監査業務とのパイプが遮断されたことにより、各ファームには仕事を受託するための営業力が課題となり、それを補完強化するために数多くの統合や合併が行われることになります。前述のようにべリングポイントはPwC傘下に統合されることになったため、現時点までに大手で独立したまま事業を継続しているのはアクセンチュア1社です。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

アドバイザリーボード

根来龍之

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

小尾敏夫

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

郡山史郎

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

西野弘

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

森田正隆

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆