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» 2009年08月04日 07時45分 公開

潮目を読む:サービスプロバイダー業界潮流――激動のM&A時代をくぐり抜けて (2/2)

[椎木茂(IBCS),ITmedia]
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ITベンダーのビジネスモデルの変遷

 かたやITベンダーについては、前回も述べたように初期のビジネスモデルの中心は高利益率を上げるハードウェアであり、サービスは無償か非常に廉価なものでした。サービスの営業モデルは、営業専門職がユーザー企業を担当し、SEが工数やコスト、作業計画・外注計画を見積もり、プロジェクトを実行するという形態であり、営業とデリバリーとが機能分化されていました。このような営業とデリバリーが分化されているモデルが機能するのは、ユーザー企業側の要求が明確になっていることが前提条件となります。ユーザー企業から明確な要求がRFP(Request For Proposal)として提示され、その回答書として提案書が出され、競合他社との比較により受託企業が決められます。

 このビジネスモデルにおいては、システム開発の品質を担保することが最大の懸案事項です。品質確保のために、開発方法論に基づき、PM、ITアーキテクト、プログラマーなどの役割分担が行われ、定められた共通の成果物を繰り返し提供しました。要件が明確でない場合には、遅延やトラブルに発展しかねないという弱点がありますが、大量受注・生産には向いているビジネスモデルであると言えるでしょう。

 このモデルにおいて大きな潮目になったのは、2002年にIBMが当時のPwCCを買収したことです。IBMはシステム構築の上流と呼ばれるコンサルティング能力を保有することによって、上記のビジネスモデルを補強し、コンサルティングからシステム構築、運用保守、アウトソーシングまで一貫して提供できるサービス主体のビジネスモデルへと転換しました。その後、日本でも大手のITベンダーが次々とコンサルティングファームとの提携を行うことになりました。また、そのほかのコンサルティングファームにおいても、このエンドツーエンドのビジネスモデルへと追随していきました。

エンドツーエンドのビジネスモデルが意味するものとは

 コンサルティングファームやITベンダーがエンドツーエンドのサービスを提供するようになったのは、クライアント企業やユーザー企業などお客様企業の要求の変化が根底にあります。従来は、お客様企業側に明確な要求やインテグレーション力があったために、ハードウェアやソフトウェアの選定が重要なテーマでした。

 現在では、例えば、24時間サービスを行う銀行システムや、グローバルでのサプライチェーン構築、時間やロケーションを超越したコールセンターなど、これまでに誰もやったことがないような新しいビジネスモデルの実現にITが深くかかわるケースが増えてきました。このようなケースでは、部分的に責任を持つプレーヤーではなく、すべての局面において責任を持てるビジネスパートナーという存在が求められます。同時にそれはサービスを受ける企業にとってのリスク回避の意味を持つことになります。

 構想策定、開発、運用、アウトソーシングなど上流から下流まで、特定の国だけではなくグローバルレベルで、CRM(顧客情報管理)、SCM(サプライチェーン管理)などプロセスを限定せず全領域――つまり(1)導入フェーズ、(2)地域性、(3)ビジネスプロセス、のすべてにおいてシームレスなエンドツーエンドのサービスが求められるようになってきたのです。エンドツーエンドのビジネスモデルの優劣は、サービスプロバイダーの今後10年間の競争を左右する要因となるでしょう。

 今回はお客様企業がシームレスなエンドツーエンドのサービスを提供するビジネスパートナーを求めるようになってきたこと、それによるサービスプロバイダーのビジネスモデルの変化について述べました。次回は真のビジネスパートナーになるための取り組みである成果共有モデルについて述べます。


著者プロフィール

椎木茂(しいのき しげる)

日本アイ・ビー・エム(日本IBM)株式会社 専務執行役員GBS事業 セクター統括担当 兼 アイ・ビー・エム ビジネスコンサルティング サービス(IBCS)株式会社 社長

1950年鹿児島生まれ。1972年に東京理科大学理学部卒業。株式会社ドッドウェル、プライスウォーターハウスコンサルタント株式会社を経て、2004年にIBCSから日本IBMに出向し、サービス事業、プロジェクト・オフィス担当。2005年1月にストラテジー&コンピテンシー、ビジネスバリュー推進担当。2006年4月、執行役員 ドリーム事業担当。2006年7月、執行役員 ドリーム事業担当 兼 IBCS代表取締役社長。2007年1月、執行役員 ビジネス・バリュー推進担当 兼 IBCS代表取締役社長。2009年7月より現職。

ビジネスプロセス革新協議会(BPIA)の常務理事も務める。



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