国策としてIT戦略に力を入れる経済産業省は、「CIO百人委員会」を発足。民間企業と行政のCIOの意見交換を活発にし、全体の底上げを図る。委員長を務めるトヨタの渡辺社長は取り組むべき5つの項目を強調した。
世界は未曾有の大不況のまっただ中にある。日本経済も深刻だ。2008年10〜12月期のGDP(国内総生産)成長率は年率換算でマイナス12.1%、3月10日の日経平均株価はバブル経済崩壊後の最安値となる7021円まで下落するなど、いまだ先行きが見えず日本企業はもがき苦しんでいる。そうした状況の下、果たしてITは企業救済の起爆剤になり得るだろうか。
経済産業省はこのたび、IT分野における官民連携の施策として、CIO(最高情報責任者)の知識や責務などを共有し議論する場である「CIO百人委員会」を発足した。
設立の背景はこうだ。これまでは民間企業のCIOが主体となった「CIO戦略フォーラム」、行政CIOからなる「行政CIOフォーラム」や「CIO百人が考える電子政府研究会」が別々に活動していた。業種や対象分野の違いはあるものの、CIOという役割の重要性と専門性に共通点が多く、官民のCIOが相互交流を図ることが有効だとして、CIO百人委員会が立ち上がったわけである。
3月26日に開かれた第1回の委員会では、委員長を務めるトヨタ自動車の渡辺捷昭社長が抱負を語った。100年に1度の経済危機と言われるが、渡辺氏は「100年に1回あるかないかの大チャンス。こうした時期にCIOが志を1つに集まり、高い目標に向かって挑戦するのは素晴らしいことだ」と強調した。
同委員会で取り組むべきこととして、ITを目的ではなく手段として活用し改革するという気持ちを持つこと、対象となる顧客や業務目的を常に頭に入れてユーザー目線で考えること、仕事の無駄を排除すること、チームで協力して仕事をするために意識改革と仕組みづくりに励むこと、モデルケースや成功体験を積み重ねて横展開することの5点を渡辺氏は挙げた。
特に力点を置いたのが、無駄の排除だ。渡辺氏は「仕事には、ムダ、ムラ、ムリがあり、このダラリを排除しなければならない。世の中に無駄な仕事はなく、あるのは無駄か仕事だけだ」と説明した。例えば、自動車のドアをつくるとき、プレス機で鉄板の型を切り取った瞬間のみが仕事で、作業員が動作する時間や搬送する時間は無駄だという。仕事の流れをよく把握し、無駄な時間をいかに少なくするかが重要だとしている。
こうした課題を解決するためには、ITならびにCIOの存在が不可欠だ。渡辺氏は「ITによって、仕事、企業、国までも改革できると信じている。(100年に1度の不況)をチャンスに変えるべく少しずつ風穴をあけ、大きな改革につながるよう共に協力して頑張りたい」と意気込んだ。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授