【第5回】ビジネス・インテリジェンス力を高め非連続な変化を先取り変革期をリードするIT経営者(1/4 ページ)

ビジネス・インテリジェンスの領域で近年急速に注目を集め事例が増えているのが、モデル化、最適化を行う情報活用、すなわち第3段階です。

» 2010年08月23日 08時00分 公開
[加藤陽一(日本IBM),ITmedia]

新たな次元に入った情報活用の環境

 1989年に米国の調査会社Gartnerのアナリスト(当時)、ハワード・ドレスナー(Howard Dresner)が、経営者や一般のビジネスパーソンが、情報分野の専門家に頼らずに自らが売上分析、利益分析、顧客動向分析などを行い、迅速に意思決定することの実用性を説き、そのコンセプトをビジネス・インテリジェンスと呼んで以来、多くの企業において、意思決定支援システム(DSS)、データウェアハウス、OLAP(online analytical processing)、そして、データマイニングといったツールを整備し、経営者の意思決定の高度化が図られてきました。

 その後、約20年の間にデジタル化された情報量は爆発的に増大し、情報の洪水ともいうべき状況の中、経営者は必ずしも必要な情報を迅速に得ることができていません。その理由はさまざまな情報が事業部門ごと、あるいは研究開発、生産、販売、顧客サービスといった機能部門ごとに業務上の目的に応じて蓄積されており、例えば、ある顧客Xとのビジネスに関する情報は図1のように企業内に散在しているケースが多く見受けられます。この場合、経営者がこの顧客Xについて会社全体としての取引内容、損益などを把握しようとすると、膨大な処理が必要となり、とてもリアルタイムに把握できないのが一般的です。

図1.企業(グループ)内に散在する顧客情報

 市場の変化をいち早くつかみ、経営判断に生かすための情報を迅速かつ正確に把握する必要性が高まっている状況において、企業グループ全体の情報の統合化と透明性向上は、喫緊の経営課題となりつつあります。一方で、企業グループ外から得られる情報量も加速度的に増えており、米IDCの調査によると2006年時点での世界のデジタル化された情報量は180エクサバイト(EB)(=1800億GB)で、2011年にはその10倍の1800EB(=1.8兆GB)、さらに2020年には、35ゼタバイト(ZB)(=35兆GB)に達すると予測しています。それらをすべて保存したDVDを積み上げると、火星までの距離の半分になる計算となり、その大半は画像(静止画、動画)に代表される非構造化データであるため、従来の検索ツールでは扱えません。

 データ量の増加と同時に計算能力も飛躍的に向上し、2008年に米IBMが開発した当時世界最速のスーパーコンピューター「Blue Gene」が1ペタ・フロップスの計算能力をもち、地球環境をシミュレーションできるようになりましたが、その4年後の2012年には20ペタ・フロップスの「SEQUOIA」が開発される見通しです。(図2)

図2.計算能力と情報量の加速度的増加
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