【第5回】ビジネス・インテリジェンス力を高め非連続な変化を先取り変革期をリードするIT経営者(2/4 ページ)

» 2010年08月23日 08時00分 公開
[加藤陽一(日本IBM),ITmedia]

ビジネスの成果に直接インパクトを与えるビジネス・インテリジェンス

 このようなデジタル環境の劇的な変化と情報技術の進歩により、ビジネス・インテリジェンスは新たな段階に移ってきています。(図3)

 すなわち、商品・サービスの売り上げ、利益などの会計情報を顧客別、事業セグメント別、地域別などの切り口で分析して、期単位に経営者に報告することや、工場や営業所など業務の現場での問題発生状況を随時報告するといった調査・報告を情報活用の第1段階とすると、過去の商品別注文履歴データを集計・分析し、次の月、期の需要予測を行い、生産計画やサービス計画に活用するといった、履歴情報の分析結果をもとにした将来予測を行うことが第2段階です。近年急速に注目を集め事例が増えているのが、モデル化、最適化を行う情報活用、すなわち第3段階です。この段階では、扱う情報の範囲や種類も広げ、情報同士の関係から意味を導き出し、ビジネス上の狙いに沿った最適解を探り当てることを目指します。

 例えば、IBMワトソン研究所の予測モデリング部門が航空会社と協力して特定フライトでのノーショー(予約して当日現れないこと)率を予測するテストでは、「ショー」「ノーショー」のラベルがついた10週間分、100万人以上の匿名の乗客記録から、個々の乗客について予約はオンライン経由か、代理店経由か、特別注文をしたか、同伴者はいたか、乗継便は何本だったかといった情報の関連付けを行う機械学習モデルを構築し「トレーニング」をさせました。その結果、従来の履歴と統計に基づくモデルと比較して2倍の精度でノーショーを割り出すことができました。この手法適用により、ノーショー乗客による直接的減収と、オーバーブッキングにより、搭乗拒否された乗客の不満による潜在的減収の損失を防ぐことができることが分かりました。(出典:IBM ProVISION Spring 2010 No.65)

 このようにビジネス・インテリジェンスの第3段階では、新たな技術を活用したモデル化・最適化によりビジネス上の期待に直接インパクトを与える結果を導き出します。

図3.ビジネス・インテリジェンスの高度化とビジネス効果増大のトレンド

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