Twitterは企業のマーケティングを変えるか戦略コンサルタントの視点(2/3 ページ)

» 2010年04月06日 15時28分 公開
[くわ原隆志(ローランド・ベルガー),ITmedia]

費用対効果などを冷静に考える

 まず、費用対効果があるのかという問題に直面するでしょう。先ほどのDellの場合は、Twitterの担当者が数多くいるため、事業として利益を上げているかの判断は難しいところです。また、売り上げは全体の0.005%程度と非常にインパクトが小さいのも事実です。

 Twitterの活用によりメディアへの露出を増やし、知名度を向上するといった面では効果を上げられそうです。ただし、ここでも費用対効果、多く寄せられるツイートに対応(返信)するための人件費の問題には注意が必要です。

 また、ツイートする場合の負の側面、すなわち不適切な情報をツイートしてしまうというリスクも存在します。担当者の手に余るツイートに対して、どのように企業内で取り扱うのか等の社内手続きの整備がなければ、かえって顧客に対して逆効果を与えかねない点にも注意が必要です。

 余談になりますが「Twitterで顧客満足度の向上を実現した」といった事例の多くは、「Twitterで顧客に指摘される以前に、社内のオペレーションを恒常的に改善しない企業体質やオペレーションに根深い問題があるのではないか」と思えてなりません。

本質的だけど解決されていない問題――情報の質は適正か?

 最も本質的な問題として、インターネットを通じて企業に寄せられる顧客の声や、Twitterを介して拡散していく情報の「質が適正なのか?」というものがあります。より本質的なことを指摘すれば、発信者の個々人の「情報の質が適正か?」ということです。

 情報の質を下げる要素としては、発信者の知的レベルの低さ、悪意や悪戯の介在、匿名性ゆえの過度な凶暴性など挙げればきりがありません。幸いなことに、この逆のパターンがあるのも事実ではありますが。

 この問題はWeb2.0の時代から存在していますが、インターネット業界――インターネットを活動・ビジネスの中心・対象としている技術者、評論家、研究者たち――から指摘されることは少なく、いまだすっきりとした回答は出ていません。Twitterを喧伝する多くの書籍・記事ではこの問題に対して、「(Twitterの利用者達の)群集の善意」や「個々人の適切な判断力」を回答としているものが多いようです。

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