いまやIT関係者に限らず話題にするようになってきたTwitterだが、実際に企業のマーケティング活動をどんな影響があるのか。戦略系コンサルティングファームであるローランド・ベルガーに話してもらう。
Twitterが流行しています。書店に行けば数多くの書籍や雑誌が目に付きます。「Twitterには書き込むけど、最近ブログやSNSはご無沙汰だな」といったせりふをわたしの周りでも耳にするようになりました。わたしも著名人と意見交換するなど気軽にTwitterを利用しています。
Twitterに限りませんが、新しいITサービスやツールが登場すると、必ず企業活動への展開・活用が提案されてきます。今回はTwitterの企業活動での利用について考えてみたいと思います。
インターネット業界では、2005年ごろからWeb2.0と呼ばれる「新しいサービスや考え方」が打ち出されてきました。当時、Web2.0という言葉が流行し、ビジネス系の雑誌にも頻繁に登場していました。講演会なども数多く開催されていました。
Web2.0時代におけるインターネットが企業活動、主にマーケティングに影響を与えると言われた特徴は3つに整理できます。
1つにはロングテールと呼ばれるものです。インターネットを通じたビジネスでは、従来と比較して営業コストが大幅に安く済むため、ニッチなターゲットを狙ったビジネスでも利益を上げることが可能となってきました。インターネット通販のAmazonが代表的です。
次に、消費者から情報が発信可能となったため、消費者間での情報流通が重要になると言われました。これにより従来の企業側からの一方的な発信は消費者に充分に訴求しにくくなると言われ、バズ・マーケティング(口コミ・マーケティング)の必要性が高まりました。例えば、ブログによる口コミ効果を狙ったブロガー・イベントは(その効果の有無は別にして)、今でもしばしば実施されています。
最後に、膨大な個々人の情報のコラボレーションによる「集合知」が、新しい価値やビジネスを誕生させると言われました。Wikipediaが好例ですが、そのほかにも「集合知」を生かして、食品メーカーが液状の納豆のタレをゲル状に固めて食べやすくしたなどの実例が挙げられます。
このようにインターネットを利用したさまざまなWebマーケティング手法が提案され、試行、実施されてきました。最近では「フリーミアムモデル」なども注目されています。
しかし、これらのWebマーケティングによって、目に見える効果を上げた企業は少ないのではないでしょうか。
例えば、ブログはよほどの有名人でない限り、そのブログを見る人の多くは関係者が中心で、潜在顧客には情報が届いていない場合が多いでしょう。また、届いたとしても、読者の多くはそのブログの記事は企業からの依頼(誘導)によって書かれていることを既に知っているでしょう。
また、「集合知」についても膨大な情報がWeb経由で存在している割には、成功事例が見つけにくいのが実態でしょう。それどころか、企業活動に悪影響を与えてしまう、いわば「集合愚」となってしまっている現象も数多く見受けられます。
Web2.0で喧伝された企業のマーケティングでのメリット享受は、正直に言えばまだまだ限定的といえるのかもしれません。さて、Twitterはこれをどう変えるのでしょうか?
Twitterの最も大きな特徴は、即座に多くの人に情報が伝わることと言えます。誰かがツイート(書き込み)を行なえば、次の瞬間にはリツイ―ト(返信)が得られ、再度情報が発信されます。これだけの速さで不特定多数に個人の発信した情報が伝わるサービスはTwitterが初めてでしょう。気軽にツイートできるということも、情報速度の向上に一役買っています。
情報拡散のスピードが速いという特徴は、バズマーケティングの問題点を解決する助けになることは確かです。鮮度の良い情報を、より多くの顧客に伝えることができるからです。ただしこの特徴は技術面での話です。
Twitterで成功した例は既にいくつか存在し、多くのメディアで紹介されています。米Dellはアウトレットセール情報をツイートし、3年間でPCを300万ドル(約2.7億円)を売り上げました。加ト吉は自社名や製品名を、流行やニュースと掛け合わせることで、多くのフォロアー(読者)を獲得しています。東急ハンズでは、実店舗の在庫検索サービスを開始しました。コムキャストはTwitterを通じて顧客の要望に応えることで、顧客満足度を向上しました。
逆の例もあります。米国の引越し用レンタカー会社のU-Haulは、Twitterでの顧客の批判が、まだU-Haulを利用したことのない潜在顧客にまで拡大しているのを知らずに放置し、ネガティブな印象が拡大してしまい、会社としての信頼を損なってしまったと言われています。
以上の事例を見ると、企業はTwitterを積極的にマーケティングに利用するべきとも思えてきますが、ここで少し冷静に考えてみましょう。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授