製薬企業の創薬部門などが持つデータは、化学記号や塩素配列などを含めた特殊なものが多い。こうしたデータを蓄積し、データマイニングやデータ分析をするソフトウェアを米Accelrysが提供している。
経済のグローバル化に伴い、国籍を問わないM&Aも珍しくなくなってきた。特に、日本で脅威とされている業界の1つとして、医薬品がある。日本で売上高シェア1位の武田薬品工業も2008年のランキングによると世界で16位。1位のファイザーと比べると3分の1という規模にとどまっている。
アステラス製薬が20位、第一三共が23位、エーザイが24位と続いているが、この規模では、高い研究レベルを持つ製薬企業を狙い撃つ形で、海外メーカーが日本の医薬品メーカーにM&Aを仕掛ける可能性も指摘されている。防衛策の1つとして、例えば国内メーカー同士の合併なども考えられる。
グローバル化は業界を問わずに進行しており、M&Aなどの大規模なものに限らず、今後は企業内の組織再編なども頻繁に実施されると見込まれる。この際に、社内の情報を効率的に運用する仕組みを構築しておく必要がある。だが、医薬品を含めた化学および科学の世界では、化学構造や生物学的配列など保持するデータ形式が特殊である。このため、従来は全社的な共有などが難しく、結果として研究者が自分だけでデータを抱え込むような、いわゆる「タコつぼ化」しているのが実情だという。
こうした状況に目を付けたのが、ソフトウェアベンダーの米Accelrysだ。20年以上事業を営んでいた企業を前身に2001年に設立された同社は、化学データや画像、テキスト、生物学的配列などサイエンス分野のデータを蓄積し、それに対してデータマイニングや分析などを実施するビジネスインテリジェンス(BI)ソフトウェアを提供している。物質の配列などのさまざまなパターンを理解した上でデータを分析するというのは、一般的なBIソフトウェアでは難しいという。世界のバイオファーマ主要30社のうち29社が同社のソフトウェアを利用しており、日本の大手製薬メーカーのほとんども採用している。同社は、これを製薬業界以外の科学関連企業にも展開する考えだ。
Accelrysのバイスプレジデントで、日本市場を担当するジェームス・シン氏によると、経営者がこうした全社横断的な仕組みを導入することで、これまで気づかなかったような新たなビジネスチャンスが見えてくる。
「例えば製薬会社でいえば、遺伝子と薬の情報をつなげることが未来のビジネスの鍵になっている」
従来の薬は、同じ病気を持つ人ならほぼ共通のものを飲むが、これでは「本当に効くかは分からない」。「特定の人にだけ効く薬をつくりたい」というのが、現在の創薬における共通認識だ。同社が提供するソフトウェア「Pipeline Pilot」は、化学データと遺伝子情報を自動的に連携し、分析することで、研究者をサポートできる。体質に合わない薬を摂取してしまうといったリスクも避けられるかもしれない。
同社はこの5月、最新版として「Pipeline Pilot 8.0」をリリース。レポーティング、画像処理、化学向けなどの機能を大幅に強化した。科学の世界のクリエイティビティや生産性をソフトウェアを用いて科学するツールとして注目できる。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授