もう1つの電力だが、こちらはスマートグリッドが米国でも話題になっている上、日本でも実用化の研究が進んでいる。そのあたり、日立にはアドバンスがある。おそらく、日立は電力や鉄道などの公共ビジネス、あるいは日立グループで、クラウドの動きをキャッチアップしようとするに違いない。
また、もう1つの可能性は同社がVANサービスの時代から延々と続けている「TWX-21」だ。400業種4万社が接続しているこのシステムは基本的にEDIシステムだが、クラウド化しビジネスクラウドに変ぼうさせようと試みている。もし、この試みが成功したなら、国内最大のクラウドシステムになる可能性がある。
3社の中で最も出遅れたように見えるNECだが、歴代の社長のほとんどは通信分野出身ということが災いしてか、今年の2月に遠藤信博氏が新社長に指名された時点で初めて、同社のクラウドへの本格的な取り組みを「中期経営計画」の中でC&Cクラウド戦略という形で取りまとめた。
ただし、既に同社のクラウドへの取り組みはスタートしており、自治体クラウドでは山形県置賜市の基幹系システムでASP型クラウドサービスを2010年1月から開始している。今後は置賜市の事例を元に全国に拡張していく予定という。
同社の得意先で最も大きな顧客にNTTドコモがある。NECは過去に合計1000台以上の高性能サーバを「i-mode」のシステムに納入し、システムの構築を請け負ってきた実績がある。i-modeも構築から相当の年月が経ち、次世代システムへの移行が期待されている。その場合、次世代システムはクラウド化される可能性が高い。そうなれば、大きなビジネスは約束されたも同然だ。
また、三井住友グループ全体をクラウド化する可能性もある。これらから、同社のクラウドビジネスの将来性も決して暗くはない。
一方のユーザーはどうか。経営を担う側としては、こちらの方がむしろ関心が高いかもしれない。
でも、先にも記したように、日本の大手ユーザーは米国のトレンドにほとんどついていけないのが実情だ。もちろん、サブプライムローン問題に端を発した大不況の影響が最大の要因だ。「ともかくすべての予算を削減する」という時期に先を見通した投資など考えられないのが正直なところだろう。それ以外にも、しょせんネットベンチャーの技術にすぎないという考えがあるのも事実だ。
ただし、このようなユーザーを取り巻く環境の中、地方自治体は行き詰まる財政事情から従来のメインフレーム中心の処理システムに見切りをつけざるを得なくなっている。オープン系+パッケージ利用に移行する動きもある一方で、SOAクラウドサービスに活路を見出そうという動きもある。
民間企業では、今のところ、リコーや三菱総研などの先進的な企業が試験的に導入するにとどまっている。
おそらく、これからクラウドの導入について貴方の会社でも語られ始めるのだろうが、実際の導入事例は少ないことも覚えておかなければならない。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授