【第6回】イノベーションコンセプトの実践イノベーションコンセプト入門(2/2 ページ)

» 2010年06月11日 11時01分 公開
[岩下 仁,ITmedia]
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 ステップ3:具体化では、「どのように価値を提供するか」という仕組みを決定します。イノベーションコンセプトとは、どこが新しく斬新なのか、既存の製品サービスや既存戦略とどこが異なり、どのような価値を提供するのかを示します。マトリックスなどのツールを使い、違いをビジュアル化し、関係者と共有します。

 お勧めは社外リソースの視点に立ち、利用できる事例やリソースは何か、ほかの業界やプレーヤーでは、どのようにして同様のベネフィットを提供しているのかを討議することです。近年ではオンラインとオフラインの組み合わせやソーシャルメディアの活用、また外部パートナー会社との提携や協業による製品サービスの提供が増えています。アマゾンや楽天、アスクルやフランチャイズ展開を進めるQBハウスも、社外リソースを徹底して活用しています。

 優れたイノベーションコンセプトとは、コンセプトそのものだけでなく、実効性も担保しなければなりません。具体化されたイノベーションコンセプトは、自社の仕組みや業界の慣行を照らし合わせ、何を補えば実行できるのか検証を行います。できない理由ではなく、イノベーションコンセプトの実行性をどのように確立するかが鍵です。

 ステップ4:実行・検証では、具体化したイノベーションコンセプトをいよいよ実施します。完璧な事業計画など存在しないように、完璧なイノベーションコンセプトはありません。その時々の市場のニーズに合った、イノベーションコンセプトがあるだけです。時とともに「誰に」「何を」「どのように提供するか」の各詳細要素を拡大したり、絞り込んだりしながら、事業の成長を目指します。

 イノベーションコンセプト通りにいかない場合、なぜ企画どおりにいかないのか、実行しながら検証していく必要があります。そもそも「何を」となるベネフィットが適切ではないのか、たまたま実行の仕組みとなる「どのように提供するか」が成立していないのか、などが検証ポイントです。

 イノベーションコンセプトとは、新しい本質であるが故に既存の仕組みやビジネスとマッチしないことが多々あります。特に新しい価値を「どのように提供するか」に工夫が必要となります。ユニクロが当初の部品としてのアパレルから方向転換をし、そしてアスクルは、顧客の拡大を続けています。

 次回はイノベーションコンセプトのまとめです。

著者プロフィール

岩下 仁(いわした ひとし)

バリューアソシエイツインク代表。戦略と人からグローバル化を支援する経営コンサルティングファーム。主なサービスは、マーケティング戦略、事業戦略、市場参入など。スペイン、INSTITUTO DE EMPRESA経営大学院、International MBA。Factsに基づいたアプローチを軸に、マーケティング戦略や新規事業企画に強みを持つ、トリリンガルなビジネスコンサルタント。


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