将来の絵姿が示された直後は、ほとんどの従業員が組織統廃合をはじめとしたPMIの取り組みの必要性や、成長することによる将来への期待を感じています。
しかし、いったん統合の作業が始まれば「どのサービスを残すか」「顧客の担当営業はどちらが中心となるのか」「給与レベルの格差は埋まらないのか」「どちらの開発方法論に統一するか」「評価・キャリア制度は変わるのか」などの具体的な問題が出始め、すぐにモチベーションを減退させ、PMIの進行を遅らせます。
このモチベーションの昂揚には、クイックウィン(直ぐに出る成果)が必要です。
PMIの多くの取り組みでは、具体的な効果が出るまでに時間がかかります。例えば、IT業界でよく見受けられる顧客基盤の拡大やクロスセルで言えば、受託開発の成約に1年程度かかることもあります。このような先々の効果発現のために、買収直後から実現すべき事項がクイックウィンです。
クロスセルの例では、1日目で顧客別案件リストを共有し、1週間で両組織のアカウント担当の再整理した上で、1カ月以内に買収先の全顧客に訪問し、統合組織を説明した上で案件を深掘りする、などを着実に成し遂げていく必要があります。
コスト削減でも「重複したシステム資産の除却」や「重複業務の統一化」が実現するのは先であっても、その候補の資産や業務のリストは買収後1週間以内で整理できます。
PMIでは、これらのクイックウィンの1つ1つが確実に実現されるよう管理する必要があります。またその成果を組織全体で確認することで、従業員のモチベーションの向上につなげます。
しかし、実際にPMIを進めれば、現場から「人がいない」「相手が協力的でない」「役割分担が分からない」など、できない言い訳が山のように出てきます。ここで経営陣が妥協しては、PMIは進みません。
経営陣がクイックウィンの実現に対して徹底的なこだわりを見せてはじめて、現場も「絶対にやらなければいけない」と本気になります。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上
早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授