PMIの推進を妨げるのは「できない言い訳」や「無言の抵抗」だけではありません。多数のチームが並行して検討を進めるため、検討漏れ、混乱、不整合、手戻りが発生します。同じミスや検討を繰り返さないためにも、PMIの落とし穴をしっかりと押さえておくこと、戦術のクイックウィンも含めたノウハウの共有が必要となります。
ここでは、CEO直下に統合管理オフィス(IMO:Integration Management Office)を組成し、PMIの全ての取り組みを統制することが有効な手段となります。
IMOは、PMIの全体計画、直近の各PMIチームの100日間の詳細なマイルストン、チーム間の調整タスク、会議体や情報共有の仕組み等々を設計し、さらにそれらの進捗と品質を管理することで、PMI全体をグリップします。また例えば「業務プロセス統合の論点整理会」「毎朝15分間のクロスセル進捗確認会」などを随時実施し、各チームのタスクに踏み込んだ個別支援を実施します
IMOは買収元と買収先の双方の社員で構成することが必要ですし、買収・統合に関するノウハウ・知見や、出身組織に捉われない客観性を担保するためにも、経営陣は外部リソースの活用を考慮すべきです。
ノウハウ・知見不足による失策の連続や、不公平感の蔓延により従業員のモチベーションが下がったPMIを活性化させるのはほとんど不可能であることを忘れるべきではないでしょう。
PMIは組織全体として、多大な労力を費やすことになります。しかし、これまで述べましたように、迅速な意思決定、クイックウィンの継続的実現、思慮深いモチベーション管理を実行すれば、成功に導くことは可能です。
もう1つ重要なこととして、一度獲得したPMIのノウハウは、その後の買収でも活用できるという点です。PMIのノウハウを蓄積することで、PMIの能力をその企業の強みにしていくことができるということです。
IT業界に構造変化 大手ベンダーの戦略転換と大量雇用減の可能性(5/11)で見ましたように、日本のIT業界がグローバルの中で生き残るためには業界再編が避けられません。今後ますます買収や企業統合が増加してきます。
このような日本のIT業界において、PMIの能力の保持は大きな競争優位の源泉になりえます。PMIを強みとして積極的に買収・組織統合を仕掛けるシステムベンダーが、今後のIT業界再編の中で勝ち組となるでしょう。
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ドイツ・カールスルーエ大学コンピューターサイエンス学部、同大学博士課程後、日本での調査プロジェクトに参画。ドイツ銀行(フランクフルト)、Droege&Comp. GmbHを経て、ローランド・ベルガーフランクフルト金融チームのコアメンバーを務め、現在東京オフィス金融チームにおいて中心メンバーの一人。金融業を中心に事業戦略・ビジネスモデル設計、M&Aや提携戦略、PMIなどの経験を多数有している。
慶応義塾大学理工学研究科修了後、三菱マテリアル、ネットワンシステムズを経て現職。米国コロンビア大学MBA。情報通信業、電機、自動車、金融、航空業界など幅広い業界における、事業戦略、新規事業立案、組織・人材戦略、マーケティング戦略、IT戦略の立案とともに、大規模PMOの運営などの実行支援も手がけている。システムアナリスト、システム監査技術者の資格を保有という一面を有する。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授